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最初に登場したのは、ピエロだった。
道化は派手なメイクと奇抜な衣装で、会場を所狭しとユーモラスに動き回り、聴衆を大いに楽しませた。
玉乗りやジャグリングなど、ロレーユにも一目見れば面白さのわかる芸当をこなしたので、彼も十分楽しむことができた。
彼は思わぬ唸り声を上げてはいけないと、ハンカチを噛んで笑いを逃していたが、道化がどうだと言わんばかりの顔で、自信満々に手品に失敗したときには、うっかり声に出して笑ってしまった。
あっと思ったが、場内全て笑いに包まれていたようで、誰も彼の声を聞きとがめた者はいないようで安心した。
次に出てきたのは、エキゾチックな長い黒髪に、涼やかな目元が特徴の、凛とした美しさを誇る歌姫だった。
彼女が登場したとき、観覧席の若い男たちの間に、軽いうねりが起きたのが、ロレーユにも感じ取れた。
女を美醜で判断することに倦んでいるロレーユも、歌姫が際立った美貌の持ち主だということを認めた。
だが、歌はがっかりするものだった。あくまで彼にとっては、ということであるが。
周りの観客たちは、皆一様にうっとりとした表情を浮かべて聞き入っていた。
演目が終わった後には、心からの盛大な拍手が送られた。
けれどロレーユには、ただ異国情緒のある美人が、口を開け閉めしているだけであった。
彼の脳裏にはどんな情景も浮かんでこなかった。
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