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十夜
「ばあちゃんはね。雨の日がきらいだった」
「うん、そうだったね」
「ばあちゃんが誰かとお別れする日はいつも雨だったからね」
「うん」
「数えきれないくらいの雨の日を過ごした」
「そうだね」
「だけど今ではね、ばあちゃんは雨の日が好きになったよ」
「そう」
「雨は泣き声を消してくれる。ばあちゃんが大好きだったひとたちのことを思い出す時間ができる」
「ん」
静かに、けれども絶え間なく雨が降り続いた。
ぼくはばあちゃんにもたれてうとうとしている。
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