二夜

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二夜

ばあちゃんが、頼みもしないのに話し出した。 「電車に乗るとね。座席のあちこちに、こう、なにか置いてある。よーく見るとね、手なんだよ。どれもこれも真っ黒に焦げてるか、真っ赤に焼けててね。昌弥は見たことある?」 「眠れないよばあちゃん、そんなの見ちゃったら」 今だってもうちっとも眠れる気がしない。 「これはばあちゃんに握手を求めてるんだ!って思ってね!ばあちゃんは全部の手を握ってやったんだよ!そりゃもう力いっぱいぎゅーーーってね。そしたら手がひとつひとつ、安心したようにすーって消えていったんだよ。ばあちゃん、いいことした!」 手さんたち、ばあちゃんがびっくりさせてごめんなさい。 僕はそっと手を合わせた。 49a9fc71-b5c3-4545-b7cd-d1401aeec768
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