三夜

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三夜

ばあちゃんが、置時計を叩いている。 ああすればなんとかなると思っている。 普通、なんともならない。 「昌弥、時計が止まっちゃったよ」 「電池切れてない?」 「換えてから一週間しか経ってないよ。見てごらん、こっちの腕時計も止まってるんだ。それもどっちとも2時57分でね」 「その時間になにかあるのかな?誰かがなにか大事なことを知らせてるんじゃない?」 ばあちゃんは、すっと声をひそめた。 「ばあちゃんにはわかる。あれはね、もうすぐおやつの時間だよって誰かが教えてくれているんだよ」 ばあちゃん、気づいてあげないと、時計を止めるくらい必死で教えてくれてる誰かがかわいそうな気がする。 947d5941-f349-44a3-b124-a7acef146601
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