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七夜
「今でも不思議だと思うことがあってね」
不思議なのはばあちゃんの頭の中だと思っているんだけど、口には出さない。
「ばあちゃんの姉ちゃんはね、病気で早くに亡くなってしまったんだけど、ちっともそんな気がしなかったんだよ」
「どうして?」
「その後に飼った猫が姉ちゃんによく似ていたんだよ」
今度は猫か。
「猫はウシっていう名前でね。ウシは獲物をとってきてはばあちゃんの前に置いて狩りのしかたを教えてくれたんだ。姉ちゃんもよく虫をとってきてはイヤだっていってもばあちゃんに渡したからね。ばあちゃんを叩いて踏んづけて起こすのも姉ちゃんみたいだったし、おやつのにぼしの頭だけをくれるところなんかそっくりだった」
姉ちゃんはなにかと問題が多い気がしたが、ばあちゃんも同じなので気にならない。
それより猫の名前変。
「いつも知らんぷりしてるんだけど、ばあちゃんが泣いてたらずっとそばにいてくれた。ばあちゃんは小さい頃よく熱を出したんだけどね。そんな時は一緒に寝てくれた。ばあちゃんが大きくなってめったに熱を出さなくなった頃、ウシは遊びに行ったまま帰って来なかった」
「姉ちゃんだったのかもね」
僕の返事はいい加減に聞こえなかっただろうか。
「そうじゃなくたっていい。どんな形であってもそばにいたいし、いてほしいと思うことがあるんだよ」
ばあちゃんのことばに、僕はなんと答えていいのかわからなかった。
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