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一夜
僕は何度も寝返りをうつ。
重くて熱い空気がまとわりつくような夜だった。
目の隅に、ゆらっとふすまが開くのが映る。
「起きてるのかい、昌弥」
「ああ、ばあちゃん、ごめん、起こした?」
「ばあちゃんが早起きなだけだよ。どれ、ちょっと涼しくしてやろうかね」
ばあちゃんはテレビのリモコンをぐいぐい押した。
「エアコン、こっち」
僕はエアコンのリモコンを指さした。
「最近のでんきはばあちゃんにはわからんよ。ばあちゃんが育ったとこではこんな日はね……」
いやな予感がした。
「はよう寝らんとあもじょの出るぞおおおおおお」
ばあちゃんは顔の前で組んだ手を、もじょもじょと動かし、白目になって歯をむき出した。
これはトラウマになるやつ。
僕はあわててぎゅっと目をつぶって枕に顔を押しつけた。
よしよし、とつぶやきながらばあちゃんが部屋を出て行く気配がした。
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