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お別れのプロローグ
回想……。そう、物語の結末はここへと繋がる。
僕が人間になるには、過酷な戦いが待っていたのだ……。
◇◇◇◇
遥か四方に果てし無く広がる草原。
いつか見たような夕陽に照らされ、オレンジ色に輝く草花が微かな風になびき揺れている。
次第に冷たさを増す風の中、振り返る南側には先程抜けて来た市街地が遠くに映り、西側と東側にはノコギリの歯のような山々が蜿蜒と連なる。
そして茜色の空に薄く望む事の出来る城壁が、進むべき道は北側のみであると知らせていた。
そんな僕たちの眼前に立ちはだかる屈強な戦士。見上げる程大柄なその男は、自らをゴリアテと名乗った。
大きく口を開けた獅子の姿が彫り込まれた、黄金に輝くアーマープレートが上半身を包み、細い楔形の板を幾枚も重ねたスカート状の鎧が下半身を護っている。片手で自らの身長を遥かに超える大槍を肩に担ぎ、仁王立ちして僕たちの往く手を阻んでいた。
「此処で殺されるのが貴様らの運命だ。もはや引き返す場所もない、侵入者は死あるのみ」
作画:ミキ・ル-テシア
僕たちの倍近くある高い位置から、見下ろすように放った低音のアルトボイス。
自信に満ちたその口調と、その豪華絢爛な身なりからしても察する事が出来るが、何よりまず本能的に恐怖を覚えた。
今まで相手にしてきた相手とは断然格が違う実力を、この直後まじまじと見せつけられる事となる。
「やれるもんならやってみやがれ、俺たちを舐めるなよ!」
「イクぜ、俺が一番乗りだ」
「私もイク!」
勇敢なのか無謀なのか、強硬突破を図った数名の男女たち。
ゴリアテは大きな体を半身後ろに捩じると、持っている大槍を旋回させる。
巨漢という圧倒的質量と柔軟な筋肉が生み出す強烈な一振りで、その者たちは断末魔を上げる間も無く真っ二つに斬り裂かれた。
少し離れた場所にいた僕と美桜も風圧だけで数歩後ろにたじろいだ。そんな攻撃の威力に目を丸くした瞬間、頬がスゥーと裂け数滴の血が飛び散った。
衝撃波……空気さえも斬り裂くそれは、音よりも速い超音速。ブォンという音はその後から遅れてやって来た。
「うおりゃ!」
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