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「へぇ、ここがディールス公爵家の敷地なんだな」
「はい、そうです。専用のスペースまで、もう少し歩きますね」
お兄さまから許可をいただいてから、数日が経ち。
その日、私はブラッドさまをディールス公爵邸に招いておりました。普通、婚約者がいる女性がほかの男性を実家に招くなど、よくはないことです。
しかし、お兄さまが「僕のお客さんとして来ていただいたことにしよう」とおっしゃってくださったので、ブラッドさまは表向きはお兄さまのお客さまということになっていました。
ディールス公爵邸を興味深そうに眺められるブラッドさま。ヴェッセル王国は魔法の先進国。そのためか、魔力のこもった石である魔法石などもたくさん採掘できたりします。なので、高位貴族は邸の外観に魔法石を使います。色とりどりの魔法石が飾られた外観は、一言で言えば煌びやかに尽きるのです。
「……さすがは、ヴェッセル一の公爵家だな」
ブラッドさまはそんなことを呟かれて、私についてきてくださいました。
そのまま少し歩き、お庭の外れへと向かう。そこが、お兄さまが普段使用されている訓練スペースなのですが……。
「どうして、ここにお兄さまがいらっしゃるのですか……?」
そこにある休憩スペースのベンチに、ほかでもないお兄さまが優雅に腰掛けていました。
お兄さまの態度を見ていると、ここはお茶会の会場なのではないか。とまで、思ってしまいます。
それくらい、お兄さまは優雅に腰掛けていらっしゃった。
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