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「……一つだけ、訂正させてくださいませ。私は、ブラッド様やシリル様とは、確かに親しくしております。が、それは決して権力者の有力候補だからではありません。ただ、純粋にお友達になりたかったからです」
ブラッド様との出逢いは突然だった。シリル様との出逢いは、ブラッド様伝手だった。
確かに隣国に伝手があると便利だと思っているし、裏社会の情報を手に入れることが出来ればなお便利だとも思っている。
でも、決して、下心から近づいたわけではない。それだけは、信じてほしい。
「……そっか。でも、フライアがそう思っていても、向こうがそう思っているとは限らないよ。もしかしたら、フライアがヴェッセル王国の次期王妃だから近づいているのかもしれない」
「違います。ブラッド様もシリル様も、私とイーノク様の関係が上手くいっていないことを把握しております」
「じゃあ、恋愛感情っていう下心があるのかもね。僕のフライアは美人だから」
やっぱり、今日のお兄様は何処かおかしい。
いつもは私のことを『可愛い妹』なんて称さないし、こんなにも長くお話をしない。
私のことを、手放しで褒めたりしない。
「……お兄様は、一体なにを考えられているのですか?」
もう、腹の探り合いは負けるに決まっている。
そう考えた私は、単刀直入に尋ねることにした。お兄様は一体、なにを考えていらっしゃるのか。
それを知らなくてはいけないような気がした。
「簡単だよ。……僕は可愛いフライアの幸せを願っている。それだけだよ」
「……嘘、ですよね?」
「ううん、嘘じゃない。僕はずっとフライアのことが可愛いと思っていたんだよ。可愛くて美人な、自慢の妹。でも、父様は僕がフライアを溺愛することを良しとはしなかった。だからね……僕は、今までフライアを疎むフリをしてきたんだ」
お兄様はそんなことをおっしゃる。
私の目をまっすぐに見つめられたまま。その目に吸い込まれてしまいそうな感覚に陥るのは、きっと気のせいじゃない。
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