お飾り王妃の最期

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 それは、本当に突然のこと。  何の前触れもなく起こってしまった必然の出来事。 「フライア様!」  そんな声が、どこか遠くから聞こえてきた。でも、私の足はその場に立つこともままならなくなって。でも、あれ? おかしいなぁ……? この声は、私が実家の公爵家にいたころの専属の従者の声じゃない? 今、ここにいるわけがない人の声じゃない? ……一体、どうなっているのかしら? 「おい! 早く医者を呼べ!」 「だから私はもっと早くにフライア様を助けに行くべきだと……!」 「分かっている! しかし、今はそんなことを口論している場合ではないだろう!」 「フライア様、フライア様!」  辺りが、騒がしい。それに、よくよく聞けばこの声の主たちはみな、私が実家にいたころの侍従たちの声なのだ。本当に、おかしいわ。私、夢でも見ているのかしら? だって彼らとは……もう、五年近く会っていないはずなんだもの。 「フライア様! 大丈夫、大丈夫ですからね」  ……遠くから、そんな声が聞こえてくる。  それから、そんな偽りの励ましの言葉なんて必要ないわ。分かっているのよ。私が、もうここで死んじゃうんだって言うことぐらいね。分かっているつもりなのよ。……後悔は、あるんだけれど。
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