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あぁ、泣かないでよ。せっかくの綺麗な顔が台無しよ。あと、せっかくの再会も台無しだわ。もっと感動的に再会できないの? 貴方は、――は本当に不器用な人。
「……バカ、みたいよ、ね。愛されないのに、働いて、働いて……。過労死って、響きが、嫌だわ……」
愛されない王妃。お飾りの王妃。
そんな風に私が貴族たちの間で囁かれていることぐらい、私だって知っていた。それでも、私は王妃としての仕事が好きだったし、誇りを持っていた。何よりも、必要とされるのならば。そう思って、どんなにひどい仕打ちにも耐えてきた。なのに、こんなことになるなんてね。もしも、次があるのだとすれば……私は『あの男』の為ではなく、もっと別の人のために、自らのために生きたいわ。
「……ありが、とう。最後に、貴方たちに合えて……嬉しかった、わ」
私はそれだけを侍従に伝えると、ゆっくりと瞳を閉じた。
……なぜだろうか。私はここで命尽きるのだと、死ぬのだという変な確信があった。
フライア・ヴェッセル。一度目の人生を、二十五歳で終えました――……。
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