ヤンデレ予備軍

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   不安要素は残るが、このまま店から脱出するのは良い。  その前に、一端足を止めた。思惑を知ってか、彼もすんなりと従う。 「帰ろ、送るよ」  桜子は、呆然と立ち尽くす後輩に声をかける。隣に不安因子が微笑むが、置いていくよりはマシなはずだと言い聞かせた。  何かあれば自分が身代わりにでもなればいい。 「はっはい」  彼女は頭が取れる勢いで頷く。バッグを引っ掴み、小走りで近づいてきた。  男とは逆、桜子の腕に抱きつく。どこか威嚇するように美麗な男を睨んだ。 「これ、お金。まぁ空気悪くしたお詫びだと思って受け取ってよ」  自称彼氏は、まるで紙くずでも捨てるかのように札を机にばらまいた。  下品な動作だと蔑み、文句の一つ溢そうとして。 「いいんすかぁ」  男の、これまた欲に塗れた完成が響き渡った。見れば全て一万円。それが十枚。  明らかに飲み代の代金ではない。  ことの重大さに気付き、思わず金銭感覚が狂った自称彼氏に声を荒らげる。 「何をしてるんですか。こんな、こんなの!」 「いーよ。別にそれぐらい」 「ふざけないでください」  五千円程度ならば財布から取り出すつもりであった。借りなど作るべきではない。  しかし十万となれば、手取りが少ない給料の上に月末の今日。
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