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「実は今日、合コン予定なんですよ。別に彼氏とかいらないんですけど、人数あわせで来てくれるなら、食事代タダでいいって」
「え、そうなんだ。良かったね」
「それで、あと一人、欲しいらしくて」
言い淀む姿。さすがに察する。
つまり桜子にも頼みたい、ということであろう。
確かに、これから参加というのは遠慮したい誘いではあった。とはいえ、かわいい後輩の頼みを無下にするのも気が引けた。
「もちろん、お金はいりません。お店のお酒が、美味しいって噂で」
「行く」
即決である。
家で化粧を削ぎ落とす勢いで拭き、つまみと麦酒をあおりたい気分ではある。
だがしかし。そこに美酒、しかも無料となれば拒む選択肢はないも同然。
何より頼られているのだ、応えてやるのが先輩の務めだ。
終始不安そうにする後輩に、平気だと言い聞かせる。
すると、安堵したように胸をなで下ろした。花が咲いたように微笑み「ありがとうございます」と頭を下げる。兎のように跳ねる姿はあいくるしい。
やはり引き受けて正解であったと嬉しくなった。
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