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後輩のためなら。何でもできる。
そのときの自分に嘘はない。だからこそ、彼女の横を陣取りつつ食事を楽しむつもりであったのだ。
「お姉さんって可愛いっすよね」
夜。身支度を調えて、二人揃って約束の飲み屋へと出向いた。
二人とも彼氏を探す訳ではないので、隅っこに座った。場の空気を壊さないように和やかに、飲み会はスタートした。はずだった。
目の前の男。金髪に染めて、耳には銀色に光るピアス。派手な姿をした年下は、何故か桜子に狙いを定めていた。
輪を外れた桜子に、わざわざ近づいた。
サラダをつまもうとした手に態とらしく触れたり、机の下にある足同士を偶然装いすり寄せたり。熱っぽい目線を投げ続けている。
推定、年は三つぐらい離れている。
恋に年齢など関係ないとは思うが、好みでもない。彼も、他にかわいい子がいるのに物好きである。
「桜子さんって、お酒好きなんすか」
「ええ、まぁ。ほどほどに」
「俺は嫌いなんですよねぇ。なんつうか、苦いっていうか。身体にも悪いし、ジュースとかの方が旨いし。桜子さんも止めた方がいいっすよ」
素っ気ない返事の桜子に比べて、男はよく口が回るものである。
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