32人が本棚に入れています
本棚に追加
頭が良いのが自慢したいのか、と辛辣な思い。
心にゆとりがなくなりかけているのを感じた。
駄目だ。そろそろお暇しよう。盛り下げるかもしれないが、我慢の限界がある。
折角の美味しい食事も、これでは台無しである。
男のものであろう刺激臭に近い香水に耐えつつ、口を開いた。
「すみません。私たち、帰りますね」
「えぇ、早すぎじゃん。もう少しいてよ」
「いえ、明日は予定があって。朝早くてですね」
「大丈夫だって。ね、ちゃんと送っていくし。女の子二人で帰るのは危ないって。襲われちゃうよー?」
目の前の男、どうにもしつこい。
後輩も帰り支度していたが、男の嘗めきった台詞に固まっていた。小声で「大丈夫かは私と先輩が決めるんだけど」と呟いたのが聞こえた。
天使のように優しい彼女でも怒るのだと、場違いな感想を抱いた。
現実逃避である。
どう乗り切るか。頭の中で次なる一手を考え倦ねていると。
「――あぁ、いたいた。こんなところで何してんの。探しちゃったじゃん」
よく、通る声であった。
最初のコメントを投稿しよう!