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婀娜っぽさに桜子は数秒固まり、徐々に内容をかみ砕き、意味を飲み込んだ。
誰が、誰の。
私の。彼氏。
長く細い指が桜子の頬をつつき、同意を求めてくる。自分が彼氏だろうと。
「勝手に合コンに行っちゃうんだもん。俺、怒ってるんだから。寂しかったなぁ」
嘘泣きをしつつ、しなを作る。
自分より大きい成人男性がかわいい子ぶる。
普通なら見られたものではないが美丈夫のおかげで、あいらしさすら感じさせた。
男が猫のごとく擦り寄ると、女子から落胆が伝わってきた。明らかなブーイングはなくとも雰囲気は重い。
「ほら、帰るよ。彼氏なら、俺がいるでしょ」
流れるように指を絡ませて手を繋ぐ。乱暴ではない。エスコートのような優麗で、無駄が一切省かれた動き。
出会って一分も満たない人間だ。皮膚が引っ付く感覚も不快感があった。
何より自分よりかなり大きな手のひらは飲み込まれているようで、落ち着かない。恐怖が勝っていた。
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