ヤンデレ予備軍

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ヤンデレ予備軍

 予定のない残業。セクハラ紛いの行為をする上司。故障するコピー機。昼食のパンが売り切れで食べ損ねる。二日かけて仕上げたデータ破損。  一週間、運勢が最悪だと思えるような災難が次々と襲いかかった。疲労とストレスは蓄積し、身体が鉛のように重かった。 「これ、よろしくお願いします」 「わかりました」  地味な同僚の男が書類を渡して、立ち去る。それを見送ってから、壁に貼り付けたカレンダーを確認した。  金曜日。今日が終われば休日が来る。 「せんぱぁい」  無心となり虚ろな瞳で、コピーされていく紙を眺めていれば声がした。  甘くて柔らか、はしゃいだ後輩女子である。  桜子にとって職場のオアシス、癒やしの存在。  いつも通り笑顔を向けたいが、頬は動いてくれなかった。まるで板でも入っているかのよう。 「せ、先輩。お疲れですね」  駆け寄る姿は、さながら大型犬。ふわふわとしたクリーム色の髪を揺らした後輩が、心配そうに顔をのぞき込んだ。  幼い言動に、派手な外見により一部の人間から誤解されている彼女。心ない社員から悪口を叩かれることも、ある。
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