オレンジ☆チョコレート

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「………気が進まないけど、する。」 そう言うと上條君がニヤリと笑って、手招きをした。 近くに来いってこと? まっすぐ上條君の近くに行くと 「お仕置きタイム。………まずは俺のことをご主人様と呼んで。」 ご主人様? ご主人様ってメイドさんみたい。 「うん。」 「違う。そこは、はい、でしょ?」 敬語を使わないといけないの? 「はい。」 「ご主人様は?」 上條君は楽しそうな表情で腕組みをした。 「……ご主人様。」 そう言うと、近づいてきた。 ちょっと近いよ…。 ドキドキしちゃう。 上條君は私の耳元に顔を近づけて 「よくできました。」 と、囁いた。 体がビクッとなる。 上條君が横に来た。 体が反応しちゃった…。 恥ずかしい……。 恥ずかしくて俯くと、上條君が私の髪を耳にかけて 「燈、耳が赤くなってるよ。」 また囁かれた。 上條君の息が耳にかかって体がビクッとなる。 上條君、近いよ…。 体が勝手に反応しちゃう……。 しかも上條君に髪を触られた…。 「もうやめて。」 恥ずかしくて耳を手で塞いだ。 「まだ始まったばかりだよ。手をどけて。」 頭を横に振ると、上條君はため息をついて 「燈、自分の立場が分かってる?」 上條君がご主人様でお仕置きを受けなきゃいけない立場。 でも恥ずかしい……。 「はい。」 「じゃあ、手をどけて。」 そう言われて渋々、手をどけると 「あの顔になりかけてるよ。」 上條君が耳元で囁いた。 あの顔になりかけてる? ダメダメ。 あの顔にならないように顔に力を入れると、上條君がプッと笑った。 「燈、眉間にシワ寄せすぎ。怖いよ。」 「だって、あの顔になりかけてるって言うから。」 そう言うと上條君は私から離れて 「あーあ、雰囲気、ぶち壊し。やる気、失せた。」 テーブルに腰をかけて、ネクタイをゆるめた。 やる気が失せたってことは、お仕置きは終わり? 「じゃあ、お仕置きは終わり?」 期待を込めて上條君を見ると 「何、その嬉しそうな顔は。保留に決まってるでしょ。」 それを聞いてハァーとため息をついた。 保留なんだ。 じゃあ、写真も消してもらえない。 「ため息つくくらい、嫌だったの?」 不思議そうな顔で私を見た。 「嫌だよ。おままごとの貴族版みたいで。」 「貴族版って。燈は、どこまでもどうかしてるね。」 どうかしてるのかな……。 「まぁ、趣向が合わなければ成立しないからね。燈が嫌だったんなら、やめるよ。」 趣向? 合わないと成立しない……? でもやめてくれるって言ってくれたから、良かった。 上條君はポケットからスマホを取り出して 「まだ時間があるから。仕事の確認して。」 やっぱり上條君、真面目だった。 「分かった。」 上條君は立ち上がると本棚の前で止まって 「一番古いのは、ここに入れた。」
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