オレンジ☆チョコレート

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「的場さん、大丈夫?ビールを一気飲みしちゃって。」 局長が心配そうな顔で私を見ると、全員の目線が集まった。 「大丈夫です。」 心配かけちゃった……。 何やってんだろう…。 「上條くーん、さっきの質問の答えは?」 根室さんが上條君に手の形で作ったマイクを向けると、上條君が困ったような表情で頭を掻く。 「うーん、松永さんですかね……。」 松永さんって、私と同期の……? そうなんだ………。 松永さんがタイプなんだ……。 松永さん、美人だもんね。 ……なんだろう、この感情は。 その場に居たくなくなってトイレに行くことにした。 トイレの鏡の前で自分の顔を見ると、なぜか落ち込んだ顔になっていた。 どうしてこんな顔になっているんだろう……。 どうして上條君の恋愛観が気になるの……。 上條君だって、私のことは何とも思ってないのに。 一人で盛り上がって、おかしいよ…。 そう思っていると、胸あたりが気持ち悪くなってトイレに戻って嘔吐した。 吐いちゃった……。 呑みすぎたかも……。 酔いも、まわってきて頭が痛い…。 トイレから出ると、廊下に下妻さんが居た。 「的場さん、大丈夫か?もうフラフラじゃないか、俺が送って行こうか?」 下妻さんが心配そうに私を見た。 下妻さん、こんな人だったっけ? いつもの下妻さんと違う……。 「一人で帰れます。心配して下さってありがとうございます。」 一礼してみんなの所に戻った。 戻ると、なぜか席替えが起きていて、上條君は松永さんの隣に座っていた。 にこやかにビールを飲みながら、話をしている。 その光景を見て、胸がズキンっとした。 どうして胸が痛くて苦しいの? もう嫌になる。 私は何をしたいの…? そう思いながら、上條君からもらった枝豆を食べていると、また気持ち悪くなってトイレに駆け込んだ。 私は一人で何をやってるんだろう…。 もう帰ろうかな……。 「飲みすぎてしまったので、先に帰ります。」 そう言って帰る準備をしていると、下妻さんが 「心配なんで送っていきます。」 みんなの前で言った。 え?下妻さん、どうしたんだろう……。 不思議に思っていると、上條君が 「僕も飲みすぎたので、帰ります。」 根室さんが上條君を見て 「上條君は二次会に出なくちゃ。」 そう言うと上條君はニコッと笑って 「また次回の時に、お誘いお願いします。」 丁寧にお辞儀をした。 その姿を見ていたら 「家まで送ろうか?」 下妻さんが心配そうな顔をした。 どうして今日はいつもと違うの? 「一人で帰れますので。大丈夫です。」 「そういうわけにはいかない。」 そういうわけにはいかないって、どうして? 困惑していると 「僕、的場さんと家が同じ方向なんで、送っていきますよ。」 上條君が下妻さんを見た。 え?上條君と家の話をしてないから、家の方向なんて知らないはず……。 どうして? 「……そうか?じゃあ、頼んでいい?」 「はい。」 下妻さんと帰るのも気まずいけど、上條君と帰るのは、もっと気まずいな……。 こんな顔で、こんな気持ちで、上條君といるのは……。 どうしよう……。 「お疲れ様でした。」 そう言って、お店を後にした。
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