オレンジ☆チョコレート

15/41
前へ
/41ページ
次へ
2人で並んで歩く。 気まずい……。 何を話そう……。 「あー、疲れた。」 そう言いながら上條君はネクタイをゆるめて、ポケットに手を突っ込んだ。 疲れたんだ。 楽しそうに飲んでたのに。 「燈はいつもああいう飲み方をするの?」 上條君は不思議そうな顔をした。 「見てたの?」 見られてたんだ……。 落ち込んだ顔も。 恥ずかしい…。 「ちょいちょい、見てた。」 「いつもは、あんなんじゃないよ。」 恥ずかしくて俯いた。 「じゃあ、どうしてあんな飲み方になったの?」 上條君の恋愛観を知って落ち込んだとは、言えない。 「それは………ビールが美味しかったから。」 「それだけで?」 上條君は怪訝そうな顔で 「燈は、下妻さんとどういう関係なの?」 立ち止まった。 は? どういう関係って、普通の先輩後輩の関係だけど、今日はなんだかいつもと違った。 「先輩だよ。」 「それは分かってる。他にないの?」 他に? 「頼れる人……かな。でも、なんだか今日は様子が変だった。」 「ふーん。」 そう言うと、上條君はポケットからスマホを取り出して 「燈の連絡先、教えて。俺の教育係りなのに知らないのは、おかしいでしょ?」 おかしくはないと思うけど……。 でも嬉しいって思うのは、どうしてだろう。 「うん。」 スマホを取り出して、連絡先を交換した。 上條君はスマホを弄りながら 「燈の家はどっち?」 やっぱり知らないのに、さっきはなんであんなことを言ったんだろう……。 「どうして家の方向が同じって言ったの?」 そう言うと、上條君はスマホを弄る手を止めて、キョトンとした顔で私を見た。 「嫌そうだったから。」 嫌そう? 「燈は分かりやすいから。すぐ顔に出る。」 へ? 私って分かりやすいの? 「そうなの?」 「そうやって自覚ないから、こっちが苦労してんじゃん。」 蔑むような顔をした。 そんな顔しなくても……。 私は上條君に苦労させてるの? 「苦労までさせてるとは思わなかった…。」 そう言うと、上條君はため息をついてスマホを弄り始めた。 「だろうね。でも、良いように言うなら、素直ってことだから。そのままでもいいんじゃない?」 素直……。 褒められてるの? 「でさ、家はどっちなの?」 「家はここからだと電車に乗って20分くらいかかる。」 上條君はスマホをしまって 「電車に乗れるの?そんな白い顔して。」 心配そうな表情をした。 白い顔? 飲みすぎちゃったからな……。 「20分間、揺れに耐えられるの?」 「…………分からない。」 そう言うと上條君は頭を掻いて 「……俺の家に来る?」 え?上條君の家に? 男の人の家に行くなんて初めてだ。 どうしよう……。 考えただけでドキドキする。 「ここから歩いて10分ぐらい。」 どうしよう………。 「どうする?」 どうするって、どうしたらいいの? 上條君の家に行っちゃう? それとも断って自力で帰る? でも20分間、耐えられる自信ない………。 電車の中で人に迷惑かけちゃうよりは、上條君の家に行った方がいい? 「どうしたの?黙っちゃって。」 怪訝そうな顔で私を見た。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加