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そう思っていると、上條君からメールが来た。
『なんて返ってきたの?嫌そうな顔しないで。下妻さん、燈のことチラ見してるから。』
嫌そうな顔?
そんなつもりないけど……。
『何を食べたいって聞かれた。嫌な顔してる?』
そう送ると、すぐにメールが返ってきた。
『適当に好きな食べ物を打って。嬉しそうな顔して。』
適当にって………。
嬉しそうな顔って、どうすればいいの…。
『唐揚げがいいです。』
下妻さんに送ると、『分かった。』と返ってきた。
これでいいの?
上條君に『唐揚げにしたよ。』と、メールを送ると上條君から『もっと可愛らしい食べ物、思いつかなかったの?』
好きな食べ物でいいって言ったじゃない。
可愛らしいって、どんな食べ物?
上條君の方を見ると、上條君と目が合った。
上條君がスマホを弄ると、私のスマホが鳴った。
『そんな顔してこっち見てると、下妻さんにバレる。』
それはまずい……どんな顔をしてればいいの?
そう思いながら仕事をしていると、あっという間にお昼になった。
「的場さん、お昼行こうか?」
下妻さんが私の所に来た。
「はい。」
出掛ける準備をしていると、スマホが鳴った。
見ると、上條君からだった。
『楽しんできて。でも、嫌そうな顔をしないこと。』
楽しんできてって書かれていて、胸がチクッとしたのは何故だろう……。
そう思いながら、下妻さんと並んで歩いていると
「的場さん、唐揚げ好きだったの?」
「はい。」
「飲み会で食べてないから、あんまり好きじゃないのかなって思ってた。」
私の顔を見てニンマリした。
「お酒と唐揚げの組み合わせは苦手でして。」
「ご飯と一緒に食べたい派?」
「そうです。」
「俺はどっちもイケるよ。」
ニンマリとした。
下妻さんのと会話、全然頭に残らない……。
下妻さんがお店の前で立ち止まって
「ここの唐揚げ、うまいよ。入ろうか。」
「はい。」
対面で席に着くと、
「唐揚げ定食がうまいんだ。的場さんに、おすすめしたい。」
唐揚げ定食……美味しそうだな。
唐揚げ定食を頼むことにした。
少し沈黙があった後、下妻さんがソワソワしながら
「今日、的場さんから食事の誘われるとは思わなかった。」
お仕置きだから……なんて言えない…。
「そうですか?」
「そうだよ。」
そう言うと下妻さんは目線を外して頭を掻きながら
「けっこー嬉しい。」
え?嬉しい?
下妻さんは照れているのか、顔を赤くして下を向いたまま
「今日は誘ってくれてありがとう。」
お仕置きだから、ありがとうって言われると胸が苦しいな……。
下妻さんもこんな表情するんだ……。
「いえいえ。」
そう言うと下妻さんが上目遣いで私を見て
「ずっと気になってたんだけど、聞いてもいいか?」
なんだろう……。
「はい。」
「………彼氏はいる?」
え?
彼氏?
ビックリして黙っていると
「突然で悪い。困るよな、突然聞かれて。」
下妻さんはアハハハと笑って
「今のは忘れて。」
忘れてと言われても……。
そう思っていると唐揚げ定食がきた。
無言のまま食べていると、下妻さんが箸を置いて
「やっぱり教えて。聞きたい。」
下妻さんが真剣な表情で私を見た。
答えなきゃダメな雰囲気……。
私も箸を置いて
「……彼氏はいません。」
そう言うと下妻さんが安堵したような顔になって
「じゃあ、今夜食事でもどう?」
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