オレンジ☆チョコレート

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仕事に戻って作業していると、上條君からメールが来た。 『下妻さんに、お茶入れて。』 また下妻さんに。 『分かった。』と、上條君にメールを送り返した。 給湯室に行ってお茶を入れて、下妻さんのデスクに持っていくと、下妻さんが照れたような顔をして 「ありがとう。」 「いえいえ。」 これでいいのかな…。 デスクに戻ると、向かいに座っている根室さんがニヤとした表情で私を見た。 何? どうしてそんな顔で私を見るの? 「どうかしましたか?」 根室さんに話しかけると 「ううん、いいの、気にしないで下さい。」 ニヤニヤしながら答えた。 そんな顔されると気になるけど……。 仕事しよう。 仕事をしてると3時前に上條君が戻って来た。 「根室さん、会議室の掃除、終わりました。」 「ありがとうございます、あと申し訳ないけど、会議が始まったらお茶も出してもらえる?」 上條君はポケットからメモ紙を出して、書いて 「分かりました。会議は何人でするんですか?」 根室さんがプリントを探して、上條君に渡した。 「数えてみて。」 「はい。」 上條君がプリントを見ながら数えて、またメモ紙に書き込んで、根室さんにプリントを返した。 「ありがとうございました。」 丁寧にお辞儀して、上條君は私の方に来て 「仕事を下さい。」 「えっと、この数字をパソコンに打ち込んで下さい。」 上條君にプリントを見せて 「上條君のパソコンにも、このアプリがあると思うけど、開いて。」 上條君が私のパソコンを覗き込みながらメモをとる。 顔が近い……。 「この部分をクリックして出すと出てくるから、ここに打ち込んで、出来上がったらコピーしてください。」 そう言うと、真剣な表情でメモを書いてる横顔に心臓がドキッとした。 どうして心臓がドキッとしたの……? 「分かりました。」 上條君はメモ紙をちぎって私に渡した。 それを見ると、『まだマスク買ってきてないの?』 昼休みなら買いに行きやすいけど、仕事中はさすがに、買いに行きづらい……。 でもお仕置きだから。 「ゲホゲホっ。ゲホゲホっ。」 おでこに手をおいて、熱がないか確かめる仕草をしてると、根室さんが 「的場さん、大丈夫?」 「多分……でも気になるので、薬とマスクを買ってきます。」 そう言って、財布を持って出掛けた。 嘘をついて心苦しいな。 エレベーターを待っていると、スマホが鳴った。 上條君から『演技力ゼロだね。棒読み。』 え? 見てたの? お仕置きだから仕方なく演技したんだから…。 『嘘をついて心苦しいよ。』とメールを返すと、すぐに戻ってきて『燈があの顔になるのが悪い。』 そう言われると何も言えない。 あの顔はどうしてもなってしまうみたい………。
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