オレンジ☆チョコレート

30/41
前へ
/41ページ
次へ
三階に着いて降りると 「303号室。」 下妻さんに言われて、部屋を見つけた。 さっきの写真だけで部屋番号が分かるなんてすごい。 そう思いながら、ドアを開けると靴を脱ぐ前に下妻さんが倒れ込んでしまった。 「大丈夫ですか?」 下妻さんは体を起こそうとするけど体に力が入らないみたいだった。 「ああ。悪いな。」 靴を脱いで中に入ると、ベッドとソファとテレビと冷蔵庫が置いてあった。 冷蔵庫を開けると、自動販売機のようにお金を払うとペットボトルの飲み物が買えるシステムだった。 その中で水のペットボトルを探して、見つけて買おうとした瞬間、後ろから抱き締められた。 「きゃーー」 叫ぶと手で口を塞がれる。 なに? 何が起こってるの? 「そんなに嫌か?」 下妻さんの声が耳元で聞こえて、体がザワザワとした。 「あの……離し」 言い終わる前に 「こうしたかった……。」 下妻さんの腕が強く抱き締めて、私の肩に顔を埋めているようだった。 どうしたらいいの? こういう状況は初めてだ…。 「……下妻さん、困ります。」 そう言うと、腕に力がこもる。 痛い……。 「痛いです。」 「もう少しだけ、こうさせて。」 下妻さんの声が震えていた。 これはジッとしていた方がいいの? 何分間くらい経ったか分からないけれど、下妻さんが離れてくれるのを待った。 「悪かった。」 そう言って下妻さんが離れて 「少し休んだら、大丈夫だ。」 ベッドに寝転んだ。 やっと離れてくれた……。 良かった。 水を買って下妻さんに渡しに行くと、もう寝ていた。 起こさない方がいいよね。 時間を確認するためにスマホを取り出して見ると、上條君からメールが来ていて『終わったら連絡して。』と書かれていた。 『終わってないけど、今下妻さんが酔っちゃってホテルで休憩中で連絡が夜遅くになるかも。』と送ると、すぐに電話がかかってきた。 上條君から電話だ。 電話に出ると 「今どこ?」 ちょっと不機嫌そうな声。 下妻さんを起こさないように小声で 「ホテルだよ。」 「ホテルは分かってる。どこの?」 「分からない。」 「まさか、ラブホテルじゃないよね?」 ラブホテル? ラブって、愛って意味だよね……。 愛のホテル……。 そう思ってると、ため息が聞こえて 「ホテルマン、居た?」 「居なかったよ。」 そう答えると、さっきより大きなため息で 「今、燈がいるとこ、ラブホテルだよ。」 え? 愛のホテル? 「ラブホテルって、何する場所か分かってるよね?」 何かしなくちゃいけない場所なの? 黙っていると 「下妻さん、何してるの?」 そう言われて下妻さんを見ると、まだ寝ている。 「寝てる。」 「何かされた?」 言っていいのかな…。 「後ろから抱き締められた。」 「……で、どうしたの?」 「離してもらえるまで待ってた。」 「……それで?」 上條君の声がどんどん不機嫌になっていく。 なんか怒ってる? 「それだけ。」 「……あっそ。そこの場所から出てきて。」 下妻さんを置いて? 「下妻さん、まだ寝てるし……。」 「今日1日、俺の言うことを聞くのがお仕置きでしょ?」 そうだった……。 下妻さんには悪いけど。 「分かった。」 「じゃあ、ホテルから出たら、もう一回連絡して。」 「うん。」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加