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電話を切ったあと、手帳のメモの部分をちぎって『今日はありがとうございました。ご馳走さまでした。先に帰ります。ごめんなさい。』と書いてホテル代のお金と一緒に下妻さんの近くに置いて、ホテルから出てきた。
ホテルから出て、上條君に電話をかけた。
「燈?ラブホテルの近くに1人でいると危ないから、大通りに出て。」
まだ不機嫌そうな声。
「分かった。」
路地を歩いて、大通りに出た。
「大通りに出たよ。」
「何が見えてる?」
「コンビニ。○×3丁目店って書いてある。」
「分かった。コンビニに入って待ってて。」
え?
迎えに来てくれるの?
「上條君、今どこにいるの?」
「自宅。チャリで行くから。待ってて。」
そう言うと、電話が切れた。
自転車で来るの?
悪いから、何か買っておいた方がいいよね?
コンビニに入って、飲み物の棚を見て、お茶のペットボトルを2本カゴに入れて、本棚の所で本の立ち読みをした。
何分か経って、自転車に乗ったスエット姿の上條君がコンビニの前で駐車してるのを見て、レジに向かった。
上條君、部屋着で来てくれたんだ。
レジが終わると、上條君がコンビニに入ってきた。
私に気がつくと、なぜか不機嫌そうな表情で
「大丈夫だった?」
「うん。来てくれてありがとう。」
エコ袋に入れたペットボトルを取り出して、上條君に渡した。
「ありがとう。」
コンビニの外に出ると、上條君はペットボトルを開けて一口飲んだ。
よく上條君を見ると、額に汗が流れてた。
急いで来てくれたの?
上條君は額の汗を腕で拭うと、自転車の鍵を外しながら
「燈の家まで送るよ。」
「いいよ。1人で帰れるよ。」
そう言うと、少し睨むように私を見て
「お仕置き、忘れたの?」
睨まなくてもいいのに……。
「荷物、カゴに入れていいよ。」
そう言いながら、私から鞄を取って入れた。
「重いけどいいの?」
上條君は自転車の向きを変えながら
「うん。で、家の方向どっち?」
「右。○×の交差点に出たら、道なりに歩いて、そうしたら○×駅に着くんだけど、そこから住宅街に入っていくと、家に辿り着く。」
「分かった。」
上條君は右に自転車を向けて歩き出した。
私はその少し後ろをついて歩く。
上條君、不機嫌で何を話していいか分からない……。
無言のまま、○×駅まで来ると、スマホが鳴った。
下妻さんからの電話。
「はい。」
「的場さん?寝てて悪かった、ごめん。」
「私も勝手に帰ってすみません。」
そう言った瞬間、上條君が私のスマホを奪って電話を切った。
え?
上條君、何してるの?
勝手に切っちゃうなんて……。
上條君は私にスマホを返しながら
「下妻さんと話すの禁止。」
禁止って……。
そう思っていると、またスマホが鳴る。
見ると、下妻さんからだった。
上條君は立ち止まって不機嫌な表情で私を見て
「下妻さん?」
「うん。またかかってきちゃった。」
スマホに目線を落とすと
「俺と下妻さん、どっちを取るの?」
え?
どっちを取る?
何を言ってるの……?
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