オレンジ☆チョコレート

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上條君が私の頬に手をそえて、真剣な表情で見つめてきた。 「………あの顔より破壊力ありすぎ。その顔でいると、燈の初めてを奪ってしまいそうになる。」 あの顔より破壊力がある…? 今のこの時間が私の初めてだよ……。 もう奪われてるし……。 上條君が王子様に見えてきた……。 恥ずかしくて視線を下に向けて 「……もう、奪われてる…。」 そう言うと、上條君が鼻で笑って 「そっちもだけど、俺が言ったのはもっと大人なこと。」 頬を撫でられた。 上條君に頬を撫でられちゃった。 もっと大人なことって何だろう? 「……また分かってない顔してる。」 頬にそえた上條君の手が輪郭をなぞって、顎をクイッと持ち上げられる。 私の唇を見つめて 「ここは好きな男にしてもらいなよ。」 え? 好きな人に? そう言われて胸がぎゅっと痛いのは、どうしてだろう……。 上條君は私の頬に唇を寄せて 「おやすみ。もう帰るから。」 そう言って立ち上がった。 なんだかモヤモヤ……。 この気持ちは何? 「お茶、ご馳走様。」 上條君は湯呑みを持って台所に行った。 その後をついて行って 「……湯呑み、置いといていいよ。」 そう言うと、シンクの中に置いて、玄関で靴を履くと 「お邪魔しました。じゃあ。」 ドアノブに手をかけた上條君に 「今日はありがとう。色々あったけど……。」 上條君は無表情でこっちを向いて 「お仕置きは終わったから、あとは燈が男にする初めてのことを俺にするってのが残ってる。……決まったら教えて。」 私が男の人にする初めてのこと……忘れてた……。 「分かった。」 そう言うと、上條君はドアを開けて 「また明日。」 「うん、気をつけて帰ってね。」 手を振ると、鼻で笑って手を軽くあげてドアを閉めた。 今日はなんだか大変な1日だったな……。 下妻さんに抱き締められたり、上條君に顔をキス? あれはキス? キスの部類に入るの? でも本物のキスはなかった……。 上條君に言われた一言が胸を苦しくさせた。 どうして苦しいの? モヤモヤしたまま、次の日の朝がきた。 会社に着くと、下妻さんが側に来て 「おはよう。」 「おはようございます。」 「ちょっといいか?」 下妻さんが廊下の方を指で指した。 「はい。」 廊下に出ると、下妻さんが小声になって 「昨日のことなんだけど、途中で電話が切れて………なんというか……。」 上條君が切ったなんて言えない。 「ごめんなさい。なんかスマホの調子が悪くて。」 頭を下げると、下妻さんが上目遣いで 「そうか。気を悪くした……わけじゃない?」 「全然、違います。」 そう言うと、アハハハハと笑って 「あー良かった。」 額に手をおいた。 「じゃあ、食事の件、考えてくれるか?」 え? また下妻さんと食事? もう上條君のお仕置きは終わったから、上條君に相談することもないんだよね……。 そう思っていると、下妻さんは頭を掻きながら 「……挽回させてくれないか?」
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