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永本君は唇を離すと、片手で私の髪の毛を後ろに流す。
何をするつもりなの………?
そう思ってると、永本君は私の首の横に顔を埋めてきた。
え?
何をしてるの………?
永本君は小さく「ん?」と呟いて、スーッと吸い込んで、ゆっくり吐く。
首に永本君の息がかかって、体がゾワゾワする。
「………的場さん、…良い匂いする……。俺、………匂いフェチだから……的場さんの匂い、どストライク…………。」
そう言って、永本君の鼻が首に触れて、もう一度、スーッと吸って吐いた。
体がゾワゾワする………。
そう思ってると、永本君が私のうなじの方に顔を移動させて、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「………やめて………下さい………。」
「………好みの匂い。」
そう言うと、永本君は私から離れて、両手首と椅子の脚を縛っているネクタイを解いた。
解放された…………良かった………。
でも、やりたくなったって………匂いを嗅ぐこと………?
そう思ってると、永本君は私の側で片膝をつけてしゃがんで
「………ごめん。……お詫びさせて。」
お詫び……………。
そう思いながら体を起こして立ち上がると、会議室のドアが開いて下妻さんが入ってきた。
「ん?永本君、ここにいたんだ、佐々木(ささき)さんが探してたぞ。」
「……分かりました。」
永本君は床に落ちてるピアスを拾って、会議室を出て行った。
永本君が出ていくと、下妻さんは椅子に座って、テーブルを挟んで反対側を手で示して
「……座ってくれ。」
「………はい。」
椅子に座ると、下妻さんはテーブルの上で両手を組んで目線を反らしながら
「………話というのは……………なんというか…………何かあったか?」
え?
何かってなんだろう…………。
黙ってると、下妻さんは顔を下に向けて
「…………聞こうか迷ったんだけど…………さっき赤い表情をして…………瞳を潤ませていたから………。」
え?
私、目まで潤ませていたの………?
そう思ってると、下妻さんは顔をあげて目線を反らしながら
「……………言いにくいんだが、…………その表情で仕事されると、……………困る人が出てくると思うんだ…………。」
「…………すみませんでした、以後、気をつけます。」
頭を下げると、下妻さんが真剣な表情で
「……何があったか分からないけど、………少なくとも、俺は的場さんと仕事をする上で………困る……。…………ここからは私的なことになるけど………………もしそのことが原因で、何かあったら守るつもりでいる………。」
え?
守る…………?
初めて男の人に言われた……………。
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