オレンジ☆チョコレート

40/41
前へ
/41ページ
次へ
仕事の話なら行くしかないよね………。 給湯室に行くと、上條君はシンクに腰をかけて腕を組んでいた。 上條君の顔を見れなくて俯いていると 「腕、出して。」 え? 仕事の話じゃないの? そう思いながら、驚いていると 「早くして。」 そう言われて、両手を前に出すと、上條君はソースが付いた方の手首を掴んで 「こっちだけでいい。」 上條君に手首を掴まれた………昨日のこと思い出して、ドキドキしちゃう………。 そう思ってると、 「もっとこっち来て。」 上條君が私の手首を軽く引っ張って、小さく一歩前に出た。 距離が近い………。 上條君は私のブラウスの袖のボタンを外しながら 「何を付けたの?」 「………ソース。」 「汚れが広がって目立ってる。」 そう言うと、上條君はポケットからティッシュを取り出して、蛇口から水を少し出してティッシュを濡らした。 ティッシュをもう1枚出して、私のブラウスの袖の中に、ティッシュを持って手を入れて、袖の外から濡れたティッシュでポンポンと叩く。 腕に上條君の手が触れてる………。 上條君は、もう1枚ティッシュを出して、乾いたティッシュを袖の外からポンポンと叩く。 それを交互に繰り返すと、染みが薄まった。 「これで少しはいいんじゃない?」 上條君の顔が見れなくて俯いて 「………ありがとう。」 そう言うと、上條君は私のブラウスの袖のボタンをはめながら 「…………何があるのか知らないけど、……燈の暗い顔は………あんまり見たくない……。」 そうなんだ…………。 見たくないんだ………。 赤い顔も、やめてほしいと書かれて………暗い顔も、見たくない………。 でも、顔に出ちゃう…………。 そう思ってると、私のスマホが鳴る。 見ると、永本君からの電話だった。 え? 驚いていると、上條君が 「出ないの?」 「………出る、ごめんね。」 そう言って、電話に出た。 「……はい。」 「的場さん?今、いい?」 「はい。」 「………今から会議室に来て頂けませんか?」 「………今からですか?」 「はい、先のお詫びをさせて下さい。」 「お詫びは………。」 「……謝りたいんです。」 「…………さっきのことは………何かの夢だと思って忘れるので、………大丈夫です……。」 「………お願いします。」 数秒間の沈黙のあと 「…………お願いです。」 どうしよう…………。 「………今、どちらにいますか?そちらに伺って謝ります。」 え? 「…………分かりました………会議室に行きます……。」 電話を切ると、上條君が 「何かの夢って、何?」 「………上條君には、関係ないことだよ……。」 そう言って、給湯室から出ようとすると、上條君が後ろから給湯室のドアに手をついて 「言わないと、燈の写真、携帯のロック画面にするよ。」 え? ロック画面…………? 嫌だけど……言いづらい……。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加