オレンジ☆チョコレート

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上條君がスマホを見せてきた。 「会社の後輩に、こんな表情見せてるんだよ。分かってる?」 スマホに写った私の顔は赤らめていた。 顔が赤い……。 恥ずかしい…。 「恥ずかしいから消して。」 上條君のスマホを取ろうとすると、上條君は届かないように上にあげた。 「やっと分かったの?」 怪訝そうな顔をした。 「いいから消して。」 上條君のスマホに手を伸ばしても、届かないように遠くに移動させる。 「そんなに消してほしいの?」 キョトンとした顔をしたかと思うと、ニヤリと笑った。 何、その顔は……。 「良いこと思いついた。俺の愛想笑いに反応したら罰ゲームね。もし罰ゲームに耐えられたら、この写真を消すことを考えてあげてもいい。それで決まり。」 上條君はスマホをポケットにしまった。 それって消さない可能性もあるってことだよね……。 私にはデメリットでしかない。 「子供みたいなことしないで、消してほしいって言ってるんだから消して!」 上條君を睨んだ。 「俺の忠告を聞かないからでしょ?」 上條君は怠そうに頭を掻いて 「燈が悪い。決まりは決まり。」 ハァーとため息をついた。 忠告を聞いてないのは、その通りだけど、だからってこんなやり方しなくていいのに……。 「何?唇尖らせて、上目遣いでこっちを見ないでくれる?」 上條君がそう言ってると、オムライスが来た。 「今の顔で店員に俺らがどんな関係に思われたか。」 上條君は蔑むような表情をした。 確かに、そうだ。 いい歳して何してるんだろう……。 「確かに…。ごめんなさい。」 頭を下げると 「別にいいけど。楽しみが1つ増えたから。」 そう言ってオムライスを食べ始めた。 楽しみって…何を考えてるんだろう? あの顔にならないようにしなくちゃ。 オムライスを食べ終わって会社に戻ると 「的場さんと上條君、もう仲良くなったの?」 局長がお弁当を食べながら、声をかけてきた。 「食事しながら仕事のことを教えてもらってました。」 上條君が微笑んだ。 上條君が笑った…あの顔にならないようにしなくちゃ。 「的場さん、どうしたの?顔が怖いけど…。」 私の目の前のデスクにいる事務員の根室(ねむろ)さんが怪訝そうな顔で私を見た。 「いや、なんでもないです。」 椅子に座ると後ろから上條君が来た。 「的場さん。」 声をかけられてメモ紙を渡された。 なんだろう? メモ紙を見ると『よく我慢できたね。でも眉間にシワ寄せていると、シワが濃くなるよ。』と書かれていた。 シワって…そうさせてるのは誰よ。 上條君の方を見ると、にこやかに課長と話しをしていた。 1時になって午後の仕事が始まると、上條君が来て 「的場さん、仕事を下さい。」 デスクの上にあった資料を上條君に渡して 「これ、30部、コピーをお願いします。」 「はい、分かりました。」 上條君はニコッと笑った。 ダメダメ、あの顔になったら……。 「どうしたんですか?」 上條君がもう一度ニコッと笑う。 ダメダメダメだって。 「的場さん、大丈夫?」 根室さんが心配そうに声をかけてきた。 「大丈夫です。心配かけてすみません。」 根室さんに心配かけちゃった…。 しっかりしなくちゃ。
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