オレンジ☆チョコレート

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上條君はメモ紙をポケットに入れて、おぼんを持った。 「的場さん、また後でお願いします。」 「はい。」 4時になるちょっと前に上條君が来て 「出来ました。どこに置いたらいいですか?」 「ありがとうございます。そこのロッカーの2段目に入れて下さい。」 立ち上がってロッカーの扉を開けて2段目を指で指した。 「分かりました。」 上條君がワイシャツのボタンを外して袖を捲って、ホチキスでとめた大量のプリントを持ってきた。 「重くないですか?」 「これくらい平気ですよ。」 上條君は私の方を見て微笑んだ。 こんな時でも、こっち見なくたっていいのに。 油断しちゃうとあの顔になってしまう。 上條君はプリントを置くと 「僕は先に保管庫で待ってます。」 保管庫? どうして? 不思議に思っていると 「保管庫での仕事がちゃんと出来ていたか、確認してほしいんです。」 何を考えているのかと思ったけど、真面目な所もあるんだ。 「分かりました。すぐに行きますから、待っていて下さい。」 仕事をして保管庫に向かった。 保管庫のドアを開けると、真っ正面にあるテーブルに上條君は座っていた。 「燈、遅い。待ちくたびれた。」 遅いって仕事をしてたから仕方ないじゃない。 「これでも仕事を早めに終わらせてきたんだけど…。それで、どこを確認してほしいの?」 そう言うと上條君はプッと笑って 「さっきのは、口実に決まってるでしょ。」 口実…。 真面目だと思ったのに。 「じゃあ、どうして保管庫なの?」 上條君はニヤリと笑って 「燈をお仕置きするためだよ。」 テーブルから立ち上がった。 だから、お仕置きって何? 「メモにも書かれてたけど、お仕置きって何?」 「そのままの意味だよ。……さて、どうしようかな。」 上條君は腕組みした。 「ちょっと待って。子供みたいなことしなくても。」 お仕置きなんて子供の頃、親に叱られた時にあったくらいで……。 会社の後輩からお仕置きされるって……。 「子供みたい?燈が反則するから悪いんだよ。」 上條君は怠そうに頭を掻いた。 「反則ってルールは決まってないでしょ?」 そう言うと、フンッとした表情で 「ルールは俺次第。」 どこまでも俺様なのね。 「私は上條君の遊びに付き合ってられない。」 保管庫から出ようとすると 「そんな態度じゃ、写真、消さないよ。」 どうしてここで写真が出てくるのよ。 写真、消してほしいけど……。 どうしよう……。 「写真は消すつもりないでしょ?」 上條君を見ると、キョトンとした表情で 「それは燈次第。」 私の態度で変わるってこと? 「本当に?」 「うん。どうする?」 どうするって……。 言うこと聞くしかないよね……。
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