雨が上がるまで

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 あれきり雨は一滴も降らなくて、彼とはすれ違うだけの日々に戻る。  あの日一気に縮まったかに思えた距離は、今はもう遠い。  他人のような横顔は、きっと私に気づいてすらいないのかもしれない。  たった一週間しか経っていないというのに、どうしてだろうか。  結局私に勇気がないせいだ。  せめて、友達になってほしい、とか。  それぐらいのこと言えたら良かったのに。  あの日、彼に告げた『じゃあ、また』。  また、会えますようにを込めた、意気地なしの自分に後悔しかない。  憂鬱に打ちのめされて、どよんとした気持ちで見上げた帰り道の空。  私の心に比例するように見る見る黒くなり始めた。  ――来る!!  もしかしたら、もしかしたら、と騒ぐ心。  それに背中を押されるように、バス停へと走る。
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