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 「本当、詩音便利なとこ済んでるよな。大学までは電車で10分だし。最寄りの駅にも近い。ここおじさんの親戚の家だっけ?」  流斗は冷蔵庫に入っていたコーラとビールを取り出して、ローテーブルの上に置いた。ビールは昨夜彼自身が買って来たものだ。  「そう、お父さんの従兄弟の家」  私はワザとダルそうに言う。"帰って欲しい"という気持ちを察して欲しくて。  「その人今アメリカだっけ?」  流斗は私の気持ちを無視してたこ焼きをビニール袋から取り出して、テーブルの上に置く。  「そう、アメリカに仕事で行ってるよ。流斗はっきり言うけどさあ、帰ってよね」  私は強めに言い切った。  流斗は右手に持っている、ビール缶のプルタブを開けた。  「詩音、残念ながら今日の最終電車には間に合わない」  流斗は左手首に巻いている腕時計を私に向ける。  "23:18"  最寄りの駅から出発する電車は0時過ぎまである。けど、流斗が家にたどり着くための電車は1分前に発車した。  「知ってたの?」  私は流斗の前に立って、テーブルに手をつく。  「何、恐い顔してるんだよ。別に良いだろう?今日も泊めてくれよ」  流斗はビールを流し込む。  「それよりさあ詩音、行くのか?」  「どこに?」  私は流斗を家に帰すのを諦めて、テーブルに着いた。  「どこにって、ほら、今日の昼食堂でアイツらと話してただろう。課外授業だか、なんだかって」  「ああ……」  黒木慎也が食堂で見せた泊り込みの課外授業の案内を思い出した。上ノ宮教授の講義。  「多分行くと思うけど、何で?」  もしかしたらその講義で何かわかるかもしれない。それに何よりも愛菜がノリノリだった。  「へえ、行くのか」  流斗はビールを飲み終わったらしく、冷蔵庫からもう1本ビール缶を持って来た。  「詩音さあ、何で明英大を選んだ?」  流斗は唐突に質問を変えた。  何?もう酔っ払ってる?  「何、急に。じゃあさあ流斗は何で明英大を受けたの?私、流斗は神奈川の大学に行くって思ってたよ。まさか実家から片道2時間掛けて通うなんて思っていなかった」  私は流斗が買って来たたこ焼きを口に運んだ。  「ハハ、俺も思わなかったよ」  「思わなかった?何それ」  また適当なんだから。どうせ適当なら、私と全然関係ない大学にして欲しかった。  「風呂借りて良い?」  流斗は私が返答する前にその場でシャツを脱ぎ始めた。  「ちょ、ここで脱がないでよ。お風呂場行って」  「何だよ詩音今更照れるなよ、昔はいつも一緒に風呂入ってただろう?」   
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