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II
晴天でもない、だからといって雨が降っているわけでもない。
8月にしては肌寒い。
不気味な天候の中、明英大学の駐車場に私達は集合した。
「ねえ、田島くん遅くない?彼がレンタカー乗ってくるんでしょう?」
時計を見ると9時35分、待ち合わせは9時だから、30分以上遅刻している。
私は田島くんの事はあまり知らないけど、何となくルーズそうな雰囲気はあった。
「あいつ、忘れてるんじゃねえの?」
何故か、大きめのトランクケースを持っている流斗が辛口気味に言う。
田島くんと流斗がお互いを気に入らないのも明らかなよう。
この課外授業で何もトラブルが起きなければ良いけど……
「ごめんね、豪の奴忘れてるわけじゃないけど、どうやら寝坊したみたいで」
先程まで少し離れた所で上ノ宮教授と何かを話し込んでいた黒木くんが私達に近づいて、謝ってきた。
「黒木くんが悪い訳じゃないんだから、別に謝らなくても」
黒木くんはやたらと田島くんの行動に関して頭を下げる。まるで親が子供のしでかした事に謝るみたいな。
「ありがとう、厳島さん。でも、豪が無責任なヤツだってわかっていながら、彼に任せてしまった僕が悪いんだ。上ノ宮教授から車のことを任されていたのは僕なのに」
課外授業の説明会の時、上ノ宮教授が車を用意してくれる人を募った。
その時、三奈木先生が車を1台なら用意できると挙手したけど、黒木くんがお父さんが持っている大きめのワゴンが借りられるからと言って、結局三奈木先生の車だともう1台必要だから、黒木くんの親所有のワゴン車で行くことが決まった。
でも直前になって、黒木くんのお父さんが課外授業の日使う予定が入ってしまったということで使えなくなってしまい、田島くんが知り合いのレンタカー屋で安く借りられるからという話になった。
「ねえ、田島くんも遅いけど三奈木先生もまだ来てないよね?あともう一人……確か」
愛菜の言う通り、三奈木先生もまだ来ていない。それにあの前髪で目が隠れている男子学生、確か名前は草鹿くん?彼の姿が見えない。相棒の小太りの男子学生、佐野くんは駐車場の端で変わったアンテナのような棒を空に向けてるけど。
「ねえ詩音、女子私達だけだね」
愛菜が耳打ちする。
「うん、そうだね。説明会にも女子は私達と三奈木先生だけだったしね」
そういえば三奈木先生は心理学部の講師なのに、なぜ上ノ宮教授の講義を手伝っているの?
「上ノ宮教授イケメンなのに、やっぱり講義内容がマニアック過ぎるのかな?どう思う詩音」
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