II

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 「う、うん、マニアックだろうね」  何せ、愛菜自身も講義中はスマートフォンの画面に(かじ)り付いていて、全く講義内容は聴いていないのだから。  「女の子ならもう一人来ますよ」  どうやら小声で話していたはずの私と愛菜の会話はしっかりと黒木くんの耳に届いていたようだ。  「もう一人来るの?」  私は黒木くんに確かめる。  「そう、僕達の1学年下、1年の進藤杏梨さん。彼女、家が少し遠いみたいで、なんか電車が遅れているらしいよ」  進藤杏梨さん、黒木くんは何となく彼女を知っている風だ。  「へえ、何黒木くんはその進藤さんと仲がいいの?」  愛菜が探るように黒木くんに訊く。  「いや、僕も実は誰か知らないんだ。さっき、上ノ宮教授から聞いたのさ。何でも、説明会の日は用事があって来れなかったらしい」  「へえ、じゃあ黒木くんの彼女ってわけじゃないんだ」  愛菜は何故かニヤニヤ。  「いや、全然、違う、違う。僕は彼女居ないから」  愛菜は更にニヤけながら私を見る。  「だってよ、詩音。よかったね」  「へっ?」  愛菜は何故か私に振った。  ええ、何で?  私、黒木くんに気があるように見えるの?  愛菜は私の耳元に顔を近づけて、小声で言う。  「顔は上ノ宮教授の方が良いかもしれないけど、おかしな講義をするより絶対黒木くんの方が良いよ」  おかしな講義って、そのおかしな講義を選択している黒木くんは大丈夫なの?と、言いたかったけど、辞めておいた。何せ、私も愛菜も同様にその講義を選択しているのだから。  「詩音、頑張って!」  愛菜はニヤニヤしながら言うと、思いっきり私の背中を押した。  背中を押された私はヨロケながら、私の前に立っていた黒木くんにぶつかった。  「あっ、ごめん」 私は黒木くんに謝りながら、結果的に飛び込む形になってしまった彼の胸から離れようと後退ったが、強い引力に導かれて再び黒木くんの胸に飛び込んでしまった。  「あっ!えっ?本当、ごめん」  「いや、いや、大丈夫だよ。どうやら、これが厳島さんのポケットに引っ掛かったみたいだ、ごめん」  黒木くんはそう言うと、私のポケットからチャームのような物を取り出した。そのチャームは黒木くんが肩に掛けているバッグに付いていて、黒木くんにぶつかった時に入り込んでしまったらしい。  これが引力の正体かあ。  私がマジマジとそのチャームを見ていると、黒木くんがクスッと笑った。  「厳島さん、これが気になるの?」  「ええ?ああ、なんか変わった形をしているなあ、と思って」  「ああ、変な形に曲がっている針金にしか見えないよね。でも、どうやらこれはカシオペア座らしいよ」  カシオペア座?黒木くんには悪いけど、本当に曲げただけの針金にしな見えない。  「黒木くん星が好きなの?」  「あっ、いやいや、違う。これは俺のじゃなくて、兄のなんだ」  黒木くんはバッグ自体を持ち上げて私に見せる。  そっかあ、あれはカメラバッグなのかあ。それでそのカメラをお兄さんから借りてきたってことかあ。  「盛り上がっているところ悪いけど、着いたみたいだ」  
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