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愛菜の意図が分からない質問に何となく嫌な予感がした。
「皆神くんとよ」
「流斗?流斗がどうかした?」
流斗の方を見ると、まだ田島くんと荷物を整えている。
「どうかしたていうか、詩音は皆神くんのこと本当にただの幼馴染としてしか思っていないの?」
"ねえ、皆神くんのこと本当に好きじゃないの?"
愛菜の質問で中学の時に友達だと思っていた女の子にされた質問を思い出した。
私は"友達として好きだよ"と返答したが、その女の子は何が気に入らなかったのか、それ以降彼女とだけじゃなく同じクラスの女子全員とギクシャクしてしまった。
「た、ただの幼馴染だよ」
愛菜に答えると、愛菜は満面の笑顔で私を見てきた。
良かった……
愛菜と"こんな事"で仲悪くなりたくない。
「それじゃあ詩音ちゃんが今気になっているのはだあれ?」
明らかなニヤニヤ顔の愛菜。
「へっ、いやあ、誰も」
私は惚ける……いや、気になる人はいる。だけど、それが恋なのかはまだわからない。
「やめた方が良いよ」
上ノ宮教授のいる方向に顔を向けながら愛菜が言う。
「あの人変人だけど、多分既婚者だよ。恋愛初心者の詩音にはちょっと難しいかな」
愛菜の言う通り、上ノ宮教授の左手に指輪がないからって独身とは限らない……でも、何故だろう?どうしても"こんな"考えが頭から離れない。
「おい」
"彼は今でも私を待っている"
「おい、詩音」
突然、腕を引っ張られて、背後に倒れそうになる。
「わあ!」
よろけた私の腰に手が回って、抱き止められた。
「っと。何、ボーとしてんだよ」
顔を上げると、目の前に色白の肌に切長の目、流斗の顔が目の前で拡大されている。
「き、急に引っ張らないで」
私は慌てて流斗から離れる。
横目で愛菜を見ると、愛菜は田島くんや黒木くんとワゴンに乗るところのようだ。
「急にじゃないけどなあ」
流斗の不機嫌そうな声。
「えっ?なに?」
思わずキツめな言い方で答えてしまう。
「おまえ、何考え込んでたんだ?」
また、冷たい声と冷たい視線を私に浴びせる流斗。
そもそも流斗は何で三奈木先生の車で一緒に行かなかったんだろう?荷物もさあ、三奈木先生自分の車で行くのに、なぜこっちに荷物だけ乗せるの?
「何も考えていないよ」
私は流斗に冷たく返事すると、流斗は目を細める。
「まあ、いいけどさあ。もう出発するから、ワゴンに乗るぞ」
「了解」
流斗に続いてワゴンに近づくと、どうやら荷物は積み終えたみたいで、皆んなワゴン車に乗り込むようだ。
運転席、助手席の後ろには3、3、2の合計10人が乗れる。
ただ、荷物が多かったのか後の2席は倒れていて、8人乗れる……
「ねえ、草鹿くんは?」
私は説明会に出席していた前髪の長い、背の低い男子学生を思い出した。
「く、草鹿は、後で皆んなと合流する」
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