II

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 「皆神くん、君は三奈木さんのゼミを受講していると彼女から聞いたが、この課外授業のことも彼女から聞いたのか?」  上ノ宮教授の質問に答えたのは流斗ではなく、黒木くんだった。  「あっ、違います教授。それ僕が教えたんです」  「黒木くん、君が?君と皆神くんは友達だったのか?それは気が付かなかったなあ」  上ノ宮教授の言葉を直ぐに流斗が否定した。  「違いますよ、俺の友人は彼ではなく……」  上ノ宮教授の運転が安定しているからなのか、3列目から寝息らしきものが聞こえて来た。  まさか愛菜?  私の真後ろに座っているし、寝息が聞こえてもおかしくない。  私がチラッと後を見ると、寝ていたのは愛菜では無く、愛菜の右側に座っている田島くんだった。  愛菜は何故か私をニヤニヤと見て来る。  「ねえ、詩音もっと右側に寄れば?進藤さん、狭いでしょう」  愛菜はそう言いながら、また私を無理矢理黒木くん側に寄せようとしている。だけど、どう見てもこんな細くて小さい進藤さんが狭く感じる訳がない。  「そっかあ、皆神くんは厳島さんの友人だったのか」  愛菜に気を取られて流斗の言葉を聞き逃したが、どうやら流斗は黒木くんの友人ではなく、私の友人であることを上ノ宮教授に伝えたらしい。  「へえ、皆神先輩って厳島先輩の友達だったんですか?私、てっきり皆神先輩は白井先輩と付き合っているんだと思っていました」  目をキラキラさせながら進藤さんは2列目の真ん中の席に座っている私を黒木くんの方へ押し出すと、前席の運転席と助手席の間から身を乗り出して、流斗の顔を覗き込んでいる。  「はは、えーと、俺は愛菜ちゃんとは付き合っていないよ」  流斗は軽い感じで言うと、進藤さんに向かって微笑んだ。  なに?今度は後輩を口説くつもり?  だけど、流斗はその後一言付け加えた。  「まだ、今のところはね」  「はあ?おまえ何言ってんだ!」  後ろの席から怒号が飛び込んで来た。  「何が、今のところなんだ、これからもないだろう!」  寝ていたはずの田島くんの耳に何故か流斗と進藤さんの小声話が届いたらしい。  「ちょっと、何で田島くんが怒っているの?関係ないよね」  田島くんの隣に座っている話の中心人物である愛菜はキレ気味に言う。  愛菜の言う通りだと思った。愛菜にとって田島くんはきっと、どうでもいい相手なのだろう。だけど、少しだけ愛菜に好意をあからさまに見せる田島くんが不憫だと思った。  「もしかして、田島先輩は白井先輩の事を狙っているんですか?」  進藤さんは前のめりの体勢を戻して、自分の席に座った。おかげで私もやっと黒木くんに当たらないように縮こまっていた肩を広げられる。      
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