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 「今日の講義は以上です」  教壇に立つ上ノ宮教授はそう言うと、一瞬こちらに目を向けた……ような気がしたが、そのまま講義室を出て行ってしまった。  気のせい?  まるで何かを訊きたいような表情をしていた。  「ねえ、だね」  ニヤニヤしながら、愛菜が肩を突いてきた。  「えっ?"また"って?」  私は愛菜がニヤニヤしている理由がさっぱりわからない。  「なあに詩音、まさか気付いていないの?」  「気付いてないって?何を?」  愛菜は今度少し頬を膨らませて、怒っている風に見せた。  「詩音ちゃん、惚けてもダメよ」  えっ?  「だって詩音も今見てたじゃない、上ノ宮教授今詩音に視線を送っていたよね?」  視線?確かにこちらを見たような。  「講義中愛菜と話し込んでいたから睨まれた?」  「いやいや違うでしょう、だって今回が初めてじゃないよ。詩音、本当に気づいていないの?」  愛菜は今度呆れ顔だ。  「はあ、詩音って結構鈍感だよね。上ノ宮教授って今日だけじゃなくて、いつも講義中詩音の顔をみてるよ」  愛菜は強気に言い切った。  確かに今日、講義が終わった時には上ノ宮教授の視線を感じたけど……いつも?気づかなかった。と、いうか。  「ねえ、愛菜」  「何?」  愛菜はバッグを持って席を立ち上がる。  「愛菜っていつも私の隣に座っているよね?」  「う……ん、そうだけど?」  「じゃあさあ上ノ宮教授が見てたのは私じゃなくて愛菜だよ。だって愛菜いつも教授の講義聴かないでスマートフォンの画面ばっか見てるよね?それがきっと気に食わないんだよ」  愛菜は手を横に振って、"違う、違う"というジェスチャーをする。  「違うんだよ、詩音ちゃん。悪いけど私にはわかるんだよ。あの教授そんな怒った顔で見てるんじゃないんだよ」  「じゃあどんな顔で見てるの?」  愛菜は顔を近づけてきて、ニコッと笑った。  「なんかね、切なそうに?愛しそうに?見てるんだよ」  切ないと愛しいは大分違うと思うけど、それに??って何?  「でも詩音良いじゃない?ああいう顔が好きなんでしょう?」  「何それ?」  「ほら、最初の講義でさあ、言ってたよね?」  「最初の講義?」  私もバックパックを持って立ち上がると、私と愛菜は話を続けながら廊下へと向かった。  隣のM講義室では2時限目が始まっているようでスペイン語らしき言葉が聞こえてきた。  「詩音、覚えてない上ノ宮教授の最初の講義、私達その講義で初めて言葉交わしたんだよ」  そうだった、愛菜は授業に興味も無さそうにだったのに一番前の右端に座っていたんだ。それで私はたまたま空いていた後ろの席に座った。  「覚えてるよ愛菜……だって愛菜急に突拍子もないことを言ったよね?」  
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