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 流斗はそう言って、テーブルとテーブルの間を器用に走って行く。  「皆神くんって優しいよね。本気で好きになりそうになるよ」  愛菜はいつもと違う真面目そうな顔をしている。  "流斗は打算的なんだよ"って言いそうになったけど、何となく言えなかった。  私と愛菜は流斗に言われた通り先に注文口へ向かった。  「ねえ、もしかして席探してる?俺たち向こうに席取ってあるけど、一緒に座らない?」  眼鏡を掛けたマニッシュヘアの男と如何にもチャラそうな明るめの茶髪の男が声を掛けて来た。  何処かで見たような顔。  「大丈夫でーす。友達が今探してるんで」  愛菜は強めの口調で二人を払い除ける。  「いやいや、今の時間帯は混んでるから空いてる席なんてないよ。何なら5人座れるからその友達も呼んだら」  この二人もしかして"友達"も女の子だと思ってる?  構内ナンパ?  「えっ?そう?本当に良いんですかあ?」  愛菜は猫撫で声で言うと、スマートフォンを取り出して電話を掛け始めた。  恐らく流斗を呼び出しているのだろうが、大丈夫?この人達気を悪くしないか?  「ねえ、厳島さんだよね?」  愛菜が電話を掛けてる横で眼鏡を掛けた男の方が私の名前を口にした。  「えっ?」  私を知っている?  「厳島(いつくしま)詩音さんと白井さんで合ってる?」  「は……い……?」  この人達誰? 上ノ宮教授の講義取ってるでしょう?僕達も取ってるんだ」  強気口調でナンパして来たチャラい茶髪男と違って、眼鏡を掛けた黒髪の男は落ち着いた雰囲気話す。  「そうだったんですか」  同じ講義の人達か、どうりで見覚えがあった訳だ。  「白井さーん、友達と話せた?席向こうだから」  茶髪のチャラい風の男は言いながら、愛菜の肩に手を乗せた。  何、この人。  「ちょっと、離しな……」  "離しなさいよ"と言おうとしたら、流斗が素早く器用に私を追い抜いて、茶髪のチャラい風の男の手を掴んだ。  「な、なんだおまえ」  茶髪の男は流斗を睨みつける。すると流斗は口角を少し上げて笑った後、頭を下げた。  「席、ありがとうございまーす」  流斗が少し大きめの声で言うと茶髪の男は訝しげな顔で流斗を見る。  「この人が友達」  愛菜は茶髪男にキツめな口調。  「マジか?男かよ」  "チッ"と舌打ちすると、一人でスタスタと先に歩き出した。  「ごめんね、アイツそんな悪い奴じゃないから、席こっち」  眼鏡を掛けた黒髪の男は柔らかい口調で言うと、私達を席まで案内した。  「だってよ、愛菜ちゃん行こう」  流斗は愛菜に向かって言うと、愛菜の歩調に合わせて歩き出した。      
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