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 「どっちも俺の彼女じゃないけど、それがあんたと関係あるの?」  "まだ"?  「はあ?おまえ何なの?さっきからその棘のある喋り方」  茶髪男は立ち上がって流斗を威嚇する。  「まあまあ、豪落ち着いて」  眼鏡の男は茶髪の男に着席を促す。  「それよりも僕らまだ自己紹介してなかったよね?僕は黒木慎也、それでそっちの感じが悪いのは田島豪、よろしくね」  黒木慎也は言い終えると、愛菜は自己紹介を始めようとした。  「あっ、大丈夫。僕ら二人のことは知っているから。そっちの彼だけ違う学部だよね?」  黒木くんは珍しく流斗のことは知らないらしい。いつもは逆で、皆んな流斗のことは知っているけど、私のことは目にも写っていないことの方が多い。  「俺はみ……」  「おまえ、皆神流斗だろう?」  田島豪が流斗の言葉を遮る。  「おまえ、あれだ、心理学の三奈木と付き合ってるって」  田島くんが嫌味を込めて言うと一瞬重たい空気が流れたが、その空気を変えたのは他ならない流斗自身。  「ハハ、そう、それ俺だよ、もう知ってるなら、自己紹介は省いて良いよな」  流斗は、笑いながら噂に関しては否定しなかった……流斗が既婚者と付き合うなんてあり得ないはずなのに……  「豪が失礼な言い方をして申し訳ない」  黒木くんが謝ると、田島くんは黒木くんを睨んだ。  「ああ、そうだ。ねえ、厳島さん課外授業に興味ない?」  黒木くんはそう言いながら1枚の紙をテーブルの上に出した。  「課外授業で……すか?」  黒木くんの隣に座っている流斗の前に差し出された紙を覗き込むと"1泊2日体験型夏季特別講義"の文字が見えた。  「えー、なに?なに?」  愛菜は自分の席を立ち上がってきて、流斗の肩に手を乗せながらテーブルに置かれた紙を覗き込む。  「これ、上ノ宮教授の特別講義なんだ。山奥にあるペンションへ行って、"心霊現象"を体験するって内容なんだけど、今年は希望者が少なくて中止になりそうなんだ。どうかな厳島さん?」  "どうかな"なんて聞かれても、霊と交信なんて……でも、上ノ宮教授の講義なら行きたい。上ノ宮教授ともっと一緒に過ごせば、もしかしたらこの"感覚"の意味もわかるかもしれない。  「へえ、面白そうだよね詩音。ねえ、これ黒木くんと田島くんも行くんでしょう?」  愛菜はノリノリのようだ。  「そう、僕らは昨年も行ったけど、だったよ」  「中々?どんな風に?」  愛菜は更に黒木くんの話に乗る。  黒木くんは眼鏡のブリッジを人差し指で上げると、声のトーンを下げて言った。  「本物が出たんだ」  
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