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「やぁ!また会ったね。どうしてここにいるの?」
Dennisは驚いているようだが、嬉しそうな笑顔で声を掛けてきた。結婚した私はもう無害ということだろうか。私は少し身構えて自分が崩壊しないように力を入れる。
「えぇ・・・今度は偶然じゃないけど。」
「どういうこと?僕が来ることを知っていたの?」
「招待状のアジェンダに名前があったから。」
「え?」
「私の夫がこのプロジェクトの仕事をしているから。」
Dennisに「私の夫」などという言葉を使っている。彼女への当てつけでもあり、彼がいなくても、私は生きられることの証明でもある。
「・・・そうなんだ。僕はケイが来るなんて知らなかったから驚いたよ。」
「ごめんなさい、ハッピーサプライズじゃなくて。」
私はまだBruggeで私に会って喜んでくれなかった彼を責めていた。傷は化膿して痕が残っている。
「そんなこと言わないで。誤解だよ。ケイが一人で勝手にそう思っているだけだよ。」
「いいのよ。私はあなたの疫病神なんだから。」
私はふざけて悪態をつく。それは本心でもあるから、真剣にふざける。彼に本心をさらけ出せることが心地よい。
「全く、何を言っているんだよ。君が疫病神なわけないだろう。いい加減にしてくれよ。」
彼が呆れたように私の気持ちを被害妄想にする。お互いの間に強い繋がりがあることを、私たちは再確認している。
「そうかしら?会えたことを喜ばないなんて・・そういうことじゃない?」
「違うよ。ケイがあの時、会場に一人でぽつんといたから、驚いて心配になっただけだよ。君が幸せであることを僕がどんなに願っているかわかっているだろう。」
「・・・ありがとう・・」
彼がいつも心配してくれるのはわかっている。ただ拒絶された傷が深かっただけだ。
「でもこの前はびっくりしたね。あんな偶然ってあるんだなあ。」
「本当、驚いたわ。約束もせず本屋で会うなんて。」
Dennisはこの前の続きを話すつもりなのだろうか。私の言ったことを覚えているのだろうか。
「ベルギーの暮らしには慣れた?」
彼は心配そうに聞いてくる。寂しそうにも見える。私が既婚者になったことを悲しんでほしい。
「えぇ、オランダとそんなに変わらないし、毎日のんびりやっているわ。」
「大丈夫なの?」
彼はまた尋ねる。
「大丈夫って言ったじゃない。」
私が大丈夫ではないと言ったら、彼は助けてくれるのだろうか。そんな気持ちがあるはずもない。
「・・・」
Dennisから言葉が出てこないことはあまりない。私のほうが戸惑ってしまう。
「この前、私が言ったことは忘れて。・・変なこと言ってごめんなさい。」
「いや、いいんだ。僕も・・・考えて・・」
私は自分の言葉で彼を混乱させたことを悔いた。既に終わった私たちの関係で、彼だけでなく彼女も巻き込んでしまう。もう話題を変えるべきだろう。
「最近は何を書いているの?」
「今はちょっと休憩中。というか次の企画の打ち合わせをしているところだよ。まだ決まっていないんだ。」
「そう、楽しみにしているわ。・・・彼女は連れてこなかったの?」
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