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 蜜月の甘さは、単調な空間を繰り返す人工甘味料に変わっていった。どこかで予測していた時間が、思ったより早くやってきた。こうして私は年老いていくのだろう。情熱は定形の時間に型押しされて消えていく。習慣が時間を動かしていく。Louisの傍らで、この時間を過ぎていくのだ。私の選んだ私である。後悔も失望もなく、私を見る。 「今日は少し遅くなるかもしれないから。」 Louisはお気に入りの水色のシャツを紺のスーツに合わせて、鏡を見ている。 「わかったわ。先に寝ているかも。」 「うん、そうして。」  Louisは一度も私を見ずに会話を続ける。おざなりなキスをくれると玄関を出て行く。車の走り去る音が聞こえてくる。私の空洞の一日が始まる。 Louisは週に一日か二日、朝方帰るようになった。仕事ではないとわかっているが、居場所を追求する気は起きない。居場所を知ったところで、私の生活は変わらない。私は彼の隣にいると決めたのだ。そして何処にいようともDennisと生きている。Louisが他の女と過ごしていたとしても、責めることはできない。  パーティーの後も、私は変わらずDennisの情報を避けるように生活している。お互い連絡を取り合うことはいつでもできるが、彼の新鮮な情報に触れるのは怖い。心が振り切れてしまうだろう。彼が最後に言った言葉が耳たぶでいつまでも揺れている。  あの時、私たちはもっと話さなければいけなかった。私の気持ちを見せるべき時だった。しかしそれが叶わなかったのも、決まっていたことだろう。もう抗う力はない。流れて、私は老いていく。  眠れなくなると言ってDennisが飲まない珈琲を淹れる。珈琲を淹れる度にDennisはよくそんなに飲めるね、大丈夫なのと言う。私にはカフェインは効き目がないのよと返す。一日に何度も一人で会話する。気づくと彼はいつも私を見ている。優しい暖かい眼差しで。  彼の存在を感じながら、私は趣味の範疇で翻訳の仕事を続けている。作家としての彼の意見をいつも聞きたいと思う。Dennisへの質問を書き留めたノートが、私の思いで埋め尽くされる。会いたい。話したい。
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