大丈夫。

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大丈夫。

この子は私が "1人" で来たときより怯えていた。 今の私は〚来希(らいき)〛を連れて来ている。 この子は来希を見ながら怯えている。 「…大丈夫?震えてるけど」 私に言われて初めて気がついたのか、この子は自分の手を見る。自分が震えてるのか確認してるみたいに。 ―…ひょっとしてこの子、人見知り?にしては少し様子が変すぎる、、違う…きっとこの子は… 〈大人は優しくて頼れる人。自分を守ってくれる人。〉 ―…この子は、 "大人" をそういう風に思ってない。   大人が怖いんだ。だったらそれは違う。間違ってる。 あえて確信を持つために聞いてみる。 「…大人が怖いのね?」 そう聞くとこの子は "なんで大人なんかを連れているの?怖くないの?" って言っているような目で私を見る。 この子は来希を見てからひどく怯えている。 震えながら見られてる来希はというと…少し悲しそう… でもこれで確信が持てた。 この子は大人を恐れてる。つまり… 「前の私と同じね…」 私がそう言うとこの子はきょとんとした顔をした。 そりゃそうなるかって納得した。 だって、大人が怖かった私が今は大人を連れて歩いている。生活している。むしろ大人を…ううん、主に来希を心から信頼し、信用している。 この子にも、そうなってほしい…だから、まずは教えてあげなきゃね。 「でもね、大人って怖くないわよ?あいつらとは違う、すごく優しいわよ」 さらにきょとんとした顔をする。 表情がここまで豊かなら、まだ大丈夫。 今がものすごく辛かったとしても、きっとすぐに大人の優しさに気付ける。 私みたいに時間はそうかからないはず 私が見つけた表情豊かなこの子は絶対に守っていく。 命が尽きても、ずっと見守っていく。 その第一歩として… 「とにかく一度私がいる家に今から一緒に来ない?」 ―…あ、断られたらどうしよう…そのときは…そのときかな、 きょとんとした顔をしながらも、目を少しだけ見開いて驚いたような顔を浮かべながら、過去の私に似た少年は来希…いや、"大人"に怯えながらも、うなずいて私達についてくる決意をしてくれた――。
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