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気さくすぎる態度とはきはきした物言いに調子が狂い、場所を譲る。
隣に来た彼女は軽く目を瞑り、蝶を手のひらのくぼみに閉じ込めるような、優雅な仕草で手を合わせた。
妙な成り行きにだ。やっぱりこなければよかったかも。
落ち着かずに視線をさまよわせ、ボロいスニーカーの先端を見詰める。私たちは肩を並べ、しばらく無言で、いるかもわからないあの子たちに手を合わせた。
「……ねえ」
彼女がゆるやかに薄目を開き、私へと一瞥よこす。
「ここ、外国で死んだ子もいいのかしら」
予想外の質問にたじろぎ、足りない頭で必死に考える。結果、出てきたのはなんとも頼りない答えだった。
「さあ……いいんじゃないですか?体から出ちゃったらどこ行こうが関係ないでしょ、お母さんがいる国に帰ってくるんじゃないかな」
「そうか。そうよね」
自分に言い聞かせるように頷き、彼女がハンドバックから取り出したのは、子供が大好きな乳酸飲料だ。母が配達をしてたから私も小さい頃はよく飲んだ。大人になってからはめっきりご無沙汰だけど。
「ぬるくなっちゃってごめんね。常温でもおいしいから」
謎の言い訳をして乳酸飲料の容器をお地蔵様の足元に立てる。
「あ、ハチミツは入ってないわよ。もちろん」
「でしょうね」
どうでもよさげに応じたところ、とりなすように微笑む。
「恥ずかしい話、自分にできるまで赤ちゃんにハチミツはだめだって知らなかったのよ」
「一歳未満の子にはリスク高いんですよね」
「母子手帳にもちゃんと載ってるのね。友達の子に会った時、うっかりあげないようにしなきゃ」
「可愛い可愛いでなんでもあげるのよくないですしね。甘えて付け上がります」
「乳児に厳しすぎない?」
変な女……だんだんうざくなってきた。会話を拒む意志表示で踵を返すが、なんと彼女は追ってきた。
「少しお話しない?」
「は?いやです」
「そういわずに」
とてもそんな気分にはなれない、ここをどこだと思っているのだ。露骨に顔を顰める私をよそに、彼女はなれなれしく腕を引っ張り、境内の隅の石のベンチへ引っ張っていく。
ジーンズに包んだお尻をベンチにおろし大きなため息を吐く。変な女に絡まれた、今日は厄日だろうか。がらにもないことをしたせいだろうか。こんな事したって何も許されはしないのに。
ざわめく葉陰から木漏れ日が落ち、地面をまだら模様に染める。
隣に膝をそろえて腰かけた女は、表情の読めない横顔でじっと祠を見詰めていた。
「なんで奥に作ったのかしら。まるで隠すように」
「安産祈願の神社に水子地蔵が出張っちゃだめでしょ。妊婦さんも来るんだし、目に付かないトコに据えとかないと」
「生きてる人間の理屈はわかるわよ」
産もうとする人間の理屈はわかる。失った人間の理屈は蔑ろ。世界は正しい人たちの理屈で回っている。
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