卓上カレンダーの言い分

大晦日の夜

「……東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律が2020年11月27日に可決・成立、12月28日に施行されました。これを受け政府は……」

　今日は大晦日。
年末特別番組の合間を縫ってねじ込まれたニュース番組で、ニコリともしない女性アナウンサーが喋っている。　

「パタン」

机の上で何かが倒れる音がした。

「何だ？」
振り返れば昨日買ったばかりの卓上カレンダーが倒れている。

　僕はつけっぱなしのパソコンを切るついでに、カレンダーへと手を伸ばした。

「触んなや！」

　突然一人暮らしの僕の部屋に僕じゃない誰かの声がした。
ビクッと体を震わせて僕は声の主を探す。

「ショックで打ちひしがれとんのや。気ぃ効かせて、そっとしとかんかい！」

僕は恐る恐るカレンダーに声をかける。

「ひょっとして、君が喋ってるの？」

「アホンダラ！　今のニュース聞いて打ちひしがれるっちゅうたら、カレンダーに決まっとるやろうが！」

「ええっ、そんな！？」

カレンダーはやれやれと呆れたように言いながら自力で起き上がった。

「なんやねん！　興が削がれてもうたわ！　せっかく悲劇に浸っとったのに！」

「なんかごめん……」