告白

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告白

「…また明日、ね」 「…好きだ」 ずっと欲しかった言葉が、後ろから聞こえた 「…だから…もう俺は大地の代わりじゃ…」 「違う、大地とか、代わりとかじゃなくて、お前が好きなんだ」 こうやって引き止められるのが嫌だ 「からかってる…よね…酷いなぁ…」 俺の好意を分かってて利用してくる 「からかってるとかじゃない!本当は、その…いつからとか分かんないけど…こうたのことを愛してるんだ…」 「聞きたくないんだよ…抱いてるとき、一回も俺の名前呼ばなかったくせに、今更どうやって信じろって…?」 そのくせ、引き止められそうになっている自分が一番嫌だ 突き放さないといけない 終わりにするって決めたから 「…伝えたら、関係がなくなるって思ったんだ」 「…」 「お前が俺を一方的に好きで、俺はお前を利用して…そういう関係だったから」 勝手に愛して、望まれるままに利用されて そんな関係を受け入れた 「伝えられなかった。伝えない愛し方もあるって思うようにした」 それも悪くないって思ってる時期もしばらくあった 「関係を絶ってまで伝えたいなんて思わなかった。ちゃんと愛せなくても、肌に触れてお前の息を一番近くで感じられたら、それでいいって思ったんだ」 宇野ちゃんが愛を伝えられないようにしたのは、俺だった 「でも、言っても言わなくてもこの関係が無くなるなら、言いたいって思った。ちゃんと伝えたかった」 「宇野ちゃん…」 「…こうたが信じられないのも分かるし、聞きたくないならそれを伝えるのもやめる…だから、これだけは聞いてほしい…」 「…何?」 「ごめんな…本当に…今までありがとう…」 俺を抱きしめる腕は弱々しくて、いつでも離れていいと言わんばかりだった 謝罪と、感謝 騙されてもいい、利用されてもいい 引き止められたら喜んで戻る 俺はそういう奴だった 意地なんて張れる性格じゃない だから、宇野ちゃんを信じよう 「…ねぇ、伝えて」 「え…?」 「俺、宇野ちゃんを信じたい…いや、信じる」 「こう…」 「言ってよ、好きだって…大地の代わりなんかじゃないって…愛してるって、言って…?」 「…好きだよ」 「うん」 「大地の代わりなんかじゃない」 「うん」 「受け入れられなかった…でも…もう…意地を張るのは無理みたいだ…」 「…うん」 「愛してる…こうたの呼吸一つ、髪の先まで俺のものだ……愛してる」 「…俺も、宇野ちゃんのこと、愛してる」 「…知ってる」 「顔も身体も、爪の先まで、俺の全ては宇野ちゃんのものだよ」 終わりにしたなら、新しく始めればいい 「…なぁ、こうた。キスしてやろうか?」 「…してくれるの?」 「もちろん…あのときも、本当はしたかった…」 重ねた唇はひび割れていて、少し痛かった その痛みが、始まりを告げているようだった 愛してるの一言を伝えればよかったのに 互いにこんなに遠回りをした 思えば俺も、心のなかで言うだけで 伝えたことはほとんどなかった これからはたくさん伝えよう 嫌なことも嬉しいことも、愛と一緒に伝えればいい 「…愛してる」 狂おしいほどに、愛してる                 ーENDー
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