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本性
『ねぇ、こうこうって俺のこと好きでしょ?』
不意に投げられたその質問に、嘘がつけなかった
ただずっと黙ったまま、目を合わせてた
『違かったら別にいいんだけど、そうなら言っておきたいことがあってさ』
優しい笑顔で、優しい声で言った言葉は
『俺が好きなのは、大地。ごめんな』
すべてが俺を呪った
『…そっか、上手くいくといいな』
『…悲しむと思った』
『悲しいけど、お前の好きな人を決めるのは俺じゃないし…』
嘘だ
俺を好きになってほしいし、今すぐ大地を殺したい
でも、初めて聞かせてくれたと思う、あいつの本音
否定なんてできない
『…こうこうは優しいなぁ』
『宇野ちゃんほどじゃないですよ〜』
『…俺、こうこうのことも好きだよ』
好きという言葉に、「も」という言葉
好かれていたことに対する嬉しさを感じたのと同時に、切なさを感じた
『こうこう俺の事好き?』
『…好きだよ』
ちゃんと断るために告白を強要するなんて、酷い人だと思う
『俺もね、こうこうのこと、ヤりたいなーって思うくらいには好きだよ』
『…は?』
『俺のこと好きなんでしょ?俺もこうこうのこと…っていうか、こうこうのからだ結構好きだからさ、セフレになってよ』
首に回された腕をほどこうとした
対して力も入ってなくて、簡単にほどけたはずだった
でも、宇野ちゃんの腕の上においた俺の手にも力は入らなくて
少し乾いた、柔らかい唇が押し付けられるのを受け入れた
この日、宇野ちゃんの…宇野の本性を知った
宇野が変わったのは、この日からだった
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