雨夜の品定め

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なかなか結論は出ません。 「階級も見た目も関係ないのではないでしょうか。 変な性格じゃなくて、真面目で素直な人を妻にするのが一番です。教育は後からすればいいのです。性格が一番大切です」 左馬頭はこんな話をします。 「昔、女房が言い聞かせてくれた本に、こんな主人公がいました。 恨み言を言ってもいい場面でも澄ました顔のまま、上品ぶって恨み言のひとつも言わない女が、ある時苦しくなって歌を遺して遠い所へ行ってしまうのです。幼い頃は、同情し、自分を持った立派な女性だと思いました。 しかし、今になって思えば立派なものではありません。無用の心配をかけて、そうしているうちに取り返しのつかないことになるのです。 中には、立派と言われて調子に乗って出家するような女もいます。その時はすっきりしても、後から後悔するものです。しかし、一度出家すれば簡単には戻れないし、そんな気持ちでお仕えするのは仏様にも失礼でしょう。 また、そこまでいかなかったとしても、一度そんなことをしてしまった女をもう一度昔のように愛することが出来ますか?信頼できるでしょうか?自分を一度捨てた女だと思えば無理でしょう。 夫婦とは、いいところや悪いところがあっても、どんな時も許しあって一緒にいるものでしょう」
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