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  貴族たちの視線を感じながら、一番初めに皇帝の元へ向かう。威厳ある皇帝の隣には、機嫌が良さそうな皇妃が座っていた。セオドアとノアは跪き、皇帝の言葉を待つ。     「顔を上げよ」     ざわついていた貴族たちも押し黙り、祝福の言葉を待った。     「この度の2人の婚姻は、帝国繁栄の象徴となるだろう。祝して杯を挙げる」     皇帝の合図とともに、セオドアとノアをはじめとするパーティーの参加者がグラス一杯のワインを飲み干した。すると徐々に会場が賑わいを取り戻し始めた。     「とても綺麗な方じゃないか」     皇帝から視線を外したところで声をかけてきたのは、セオドアの兄ルシフェルであった。     「兄上……」     「挨拶はいらないよ。お前とは毎日顔を合わせているからね。それよりも、そちらの綺麗な方を紹介してほしいな」     視線を向けられたノアは、自然な動作で頭を下げた。     「ご機嫌麗しゅう、皇太子殿下。私はノア=ペストリーと申します」   「ノアというんだね。じゃじゃ馬な弟だけれど、よろしく頼むよ」     「いえ、私の方こそ爵位を頂いたばかりですので、ご迷惑をおかけします」     「そういえば、騎士が爵位を賜ったと聞いたな。ノア殿の事だったんだね」     「はい」     今回の婚姻はペストリーが皇族に従属する貴族であることを示すために、ノアが婿入りするという形をとった。つまり、ペストリーが皇族の傘下に入ったということだ。     「お前も大公という地位に立つのだから、しっかり頑張らなければならないよ」     婚姻のタイミングでセオドアは事業拡大のために、大公の位に着くことになった。皇族としての交流はゼルジュ、大公としての交流はペストリーの家名を使うことになっている。     「帝国の繁栄のために、力を尽くすことを誓います」     ルシフェルは頷くと、「またね」と言って貴族たちの中に紛れていった。周囲で様子を窺っていた貴族が一斉に2人を囲む。基本はセオドアが応答し、話を早々に切り上げた。
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