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  「そろそろ、休むか」     ファーストダンスを終え、何曲か踊りこなした後セオドアはそう提案した。ノアは希少なワインが注がれたグラスを二つ持ってきて、そのうち一つをセオドアに差し出す。肯定と取ったセオドアは彼の腰を抱いてテラスに出る。     「疲れたか?」     「いえ、それほどでもありません」     ノアはグラスを傾けながら、すっかり暗くなった外の庭園を眺めていた。特に話すことも思い浮かばず、二人は静かに酔いを楽しんだ。どちらかが話を切り出さねばと、同時に息を吸う。さらに同じタイミングでカーテンが揺れ、新たな来客者が訪れた。     「申し訳ありません、タイミングがつかめなかったもので」     極めて明るい口調で声をかけてきたのは、ルイだった。挨拶もなく目を細めて笑う彼に、無礼を教える者はここにはいなかった。     「紹介する予定だったのだから問題ない」     せっかちなところのある恋人に、少々呆れながら笑う。ノアも特に訝しむわけでもなく、続く言葉を待っているようだった。     「私の恋人のルイだ。仲良くしてやってくれ」     「……。初めまして、ノア=ペストリーです。こちらこそよろしくお願いします」     二人は握手をすると、お互いほんの少し力を込めた。     「ノアさんとなら上手くやっていけそう」     無邪気な微笑みに、ノアは目を伏せて肯定した。特に争うような雰囲気も感じられず、セオドアはひっそりと息を吐く。
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