3

10/11

70人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
  紅茶を片手に仕事の資料に目を通していると、例の騎士団がやってきた。庭にいたルイが玄関ホールまで案内していた。ルイの少し後ろを歩く騎士を見たことがあった。     「英雄の家系を寄越すとは、兄上も粋なことをする」     刈り上げられた赤茶の髪は、英雄のシンボルとして知られている。先祖返りと言われるほどに英雄の血を強く受け継いだ男は、現在帝国の騎士団長を務めている。目の前の青年はその団長の子息であった。父親ほどでないにしろ、素質を十分に受け継ぎさらには秀才であると聞く。勤勉な性格は貴族の間でも高く評価されていた。     「久しいな、コンラッド」    数年ぶりに会う友人に声を掛けた。すると、表情を引き締めたコンラッド=エヴァンスがセオドアを見て膝をつく。     「コンラッド=エヴァンス、この度王命を受け、警護の任にあたらせていただきます」     「話は聞いている。よろしくたのむよ」     コンラッドは短く返事をしたまま、顔を伏せている。この男は至極まじめで旧知の仲であるにもかかわらず、セオドアの許可を待っていた。     「楽にしてくれて構わない。こちらもお前にその態度でいられると心地が悪い」     そう言うと、静かに立ち上がりわずかに眉を下げた。分かり難いが、これが彼の唯一の表情と言っていい。父親に似て良い男に育ったものの、この不愛想具合が欠点だ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加