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  セオドアはとりあえず、コンラッドのみを執務室に呼び業務の説明をした。本来であれば家令がやってくれるような説明や案内も行い、以前のように話せるまでには距離感を取り戻していた。     「宿直の人数はお前に任せるが、決まったら報告してくれ」     「分かりました」     話がひと段落すると、コンラッドが「そういえば」と切り出す。     「先ほど途中まで案内してくださった方が奥方様でしょうか」     使用人には見えない服装やしぐさでコンラッドはそう判断していた。貴族としてパーティーに参加することがほとんどない彼は、ルイのことを知らなかったようだ。     「いや、彼は私の恋人だ」     「愛妾ということですか」     セオドアは複雑な表情を浮かべる。本来であればそういった立ち位置になる。しかし、願望を言うのであれば、セオドアの愛する人はルイただ一人で妾などと表現したくなかった。   「余計なことを聞きました。申し訳ありません」     「気にするな。ルイの立場が良くないのは理解している」     居心地が悪そうなコンラッドにセオドアは重ねて説明する。     「聞いただろうが私の結婚は政略的なものだ。私も相手も、それにルイも理解している。今は仕事でいないが、邸に戻った時に伴侶を紹介しよう」     頷くコンラッドは、他にも気になることがあるようだった。     「気になることがあれば遠慮せずに聞いてくれ」     「では、奥方様の仕事というのは一体……」     おそらく結婚式を挙げてすぐ駆り出されるような仕事が気になるのだろう。     「私も詳しくは知らないのだ。どうやら騎士であるようなのだが深く聞こうとすると機密事項だと言われてしまった」     「暗躍を主とする部隊の場合、家族にも言えませんからね。執拗に問い詰めないのが無難でしょう」     納得した様子でコンラッドは質問をやめた。詮索しないのが良いだろうという判断は、セオドアも同じだ。話に区切りがつき、今晩から業務の指示を出すためにコンラッドは退出した。
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